第1章:1回のTRですべてを終わらせる究極の時短「EPI法」
これまでに紹介したスピンエコー(SE)法や高速SE(FSE)法は、どれほど工夫しても、画像を1枚完成させるために何回か「TR(繰り返し)」を待つ必要がありました。
しかし、このEPI法(Echo Planar Imaging:エコープラナーイメージング)は、次元が違います。なんと、「たった1回のTR(90°パルスを1発打つだけ)で、1スライスに必要なk空間のデータをすべて一網打尽にする」という、MRI界の最速王です。
1-1. なぜ1回で全部撮れるのか?(ジグザグ走行の秘密)
通常は、1行データを取るごとに次のTRを待ちますが、EPI法ではパルスを1発打った直後、「読取傾斜磁場」をプラス・マイナス・プラス・マイナス…と、ものすごいスピードで反転(スイッチング)させます。
この磁場の超高速往復ビンタに合わせて、その隙間に「位相エンコード傾斜磁場」をちょこちょこと細かく入れ込んでいきます(ブリップパルス)。
データ空間(k空間)を、1回のチャンスの間にジグザグに猛スピードで駆け抜けて一気に埋め尽くすイメージです。この撮影時間はわずか数ミリ秒~数十ミリ秒。患者さんの動きを完全に止めて撮影することができます。
1-2. 最速王の代償:「磁化率効果の嵐」
1発のパルスだけで済むのは最高ですが、当然とんでもない代償(デメリット)があります。
データを一筆書きで集めている間、お助けマン(180°パルス)がまったく介入しません。そのため、「磁場のひずみ(不均一)による位相のズレ」が時間の経過とともに雪だるま式に蓄積されていきます。
その結果、国試の文章題で最も狙われるEPIの特徴がこれです。
⚠️ EPIの最大の弱点
「磁化率効果による歪みが、MRIの全シーケンスの中で最も顕著に表れる(最弱)」
空気が溜まっている副鼻腔の近くや、骨のキワ、あるいは体内の金属の周りでは、画像が目も当てられないほどグニャグニャに歪んでしまいます。
※ただし、この「磁場の乱れに超敏感」という弱点を逆に利用して、脳の血流変化をリアルタイムで追いかける**「fMRI(機能的MRI)」や、ページ4で学んだ「DWI(拡散強調画像)」**のベースの撮影技術として大活躍しています。
第2章:コイルの感度差でデータを間引く「パラレルイメージング(SENSE)」
これまで紹介した高速化技術は、すべて「磁場の出し方(パルスシーケンス)」を工夫するものでした。
しかし、このパラレルイメージング(代表例:SENSE法)は、アプローチが全く異なります。磁場ではなく、体を囲んでいる「受信コイル(アレイコイル)」の賢さを利用して高速化を達成します。
2-1. なぜコイルを使うと撮影時間が半分になるのか?
撮影時間を決める絶対公式をもう一度思い出してください。
$$
撮像時間 = \frac{TR \times N \times 撮像加算回数}{ETL}
$$
時間を短くするためにデータの行数(N:位相エンコード数)を半分に間引くと、撮影時間は半分になりますが、画像がダブってしまう「折り返しアーチファクト(エイリアシング)」が起きるのでしたね。
パラレルイメージングは、「データ(N)をわざと半分に間引いて、高速で撮る。当然画像は折り重なってバグるけど、配置された複数の受信コイルの感度データを使って、コンピューターが元の正しい画像に計算で復元する」という、とんでもない裏ワザ(ズル)をしています。
🧠 慢殺のルール(SENSE factor)
データを間引く倍率を「SENSE factor(パラレルイメージングファクタ)」と呼びます。
「SENSE factorを『2』に設定すると、データを半分しか集めないため、撮影時間はきれいに『2分の1(半分)』になる」
この関係性は国試の計算問題や文章題で非常によく問われます。
2-2. パラレルイメージング(SENSE)の凄すぎるメリット
データを間引いて計算で直しているだけなので、これまでの高速化技術のような「画質のトレードオフ」がほとんど起きないのが最大の強みです。
- 画像コントラストに影響を及ぼさない(TRやTEの長さをいじっていないから!)
- エコー時間(TE)を短くできる(データを集める総時間が短いから!)
- 磁場のひずみ(不均一)の影響が少なくなる(一瞬でデータを取り終えるから!)
特に、お腹の断面(腹部横断像)のように、前と後ろからアレイコイルが患者さんを挟み込むように対向して配置されている場合に、その本領を最大限に発揮します。
2-3. ズルをした代償:「極端な長方形FOVでの折り返し」
ただし、コイルの計算能力にも限界があります。
位相エンコード方向の撮像視野(FOV)を極端に狭くした「長方形FOV」の状態でパラレルイメージングを無理に発動させると、コイルの計算が追いつかなくなり、画面のど真ん中に自身の画像がベチャッと折り重なって写る「折り返しアーチファクト」が発生してしまいます。
📋 EPI法 vs パラレルイメージング 比較まとめ
国試で混乱しやすい2つの最先端高速化技術の特徴を、対比させて脳内に整理しておきましょう。
| 高速化技術 | スピードの秘密 | 最大のメリット | 致命的な弱点(代償) |
| EPI法 | 1回のTRでジグザグ一筆書き | 撮影時間が数ミリ秒(爆速) | 磁化率効果(歪み)が全シーケンスで最悪 |
| パラレルイメージング (SENSEなど) | コイルの感度を利用してデータを間引く | 画像コントラストに影響を与えない | 極端な長方形FOVで折り返しアーチファクトが発生 |


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