これまでは「空間の放射線」や「物質が受けるダメージ」を扱ってきましたが、最後は「放射線を出す側(線源)」や、気体・化学物質などの「ミクロな変化」を表す指標たちを片付けます。
ここをマスターすれば、国家試験の「基本量と単位」の範囲は完璧に得点源になります。さっそく見ていきましょう!
1. 放射能と壊変定数:「数」か「確率」か
この2つは単位が全く同じなので、定義をしっかり区別する必要があります。
放射能(Activity)
- 単位: s⁻¹ (特別名称:Bq = ベクレル)
- 対象: 放射性核種
- 超・直感定義: 1秒間に、不安定な原子核が「壊れる数」。
放射能とは「能力」という名前がついていますが、実態は単なる「カウント(回数)」です。1秒間に100個の原子核が壊れて放射線を出したら、それは「100 Bq(100 s⁻¹)」です。
壊変定数(Decay Constant)
- 単位: s⁻¹
- 対象: 放射性核種
- 超・直感定義: 1秒間に、1つの原子核が「壊れる確率」。
壊変定数(λ:ラムダ)は、原子核の「不安定さ」を表すサイコロのようなものです。
放射能(壊れる数 A)は、今ある原子核の総数(N)に、このサイコロの当たる確率(λ)を掛け算することで求まります。
$$A = \lambda N$$
2. W値(W-value):気体電離の参加費
- 単位: J (※実用上は eV をよく使う)
- 対象: 気体分子
- 超・直感定義: 気体中で「1つのイオン対」を作るのに必要な平均エネルギー。
放射線が気体の中を通ると、気体の分子を「プラスのイオン」と「マイナスの電子」に引き剥がします(これをイオン対と呼びます)。
この引き剥がし作業1回あたりに消費されるエネルギーが「W値」です。気体の種類によって決まっており、空気のW値は約 34 eV(電子ボルト)です。
3. 放射線化学収率:化学変化のコスパ
- 単位: mol・J⁻¹
- 対象: 化学物質
- 超・直感定義: 放射線によって「変化・生成した物質の量」。
放射線のエネルギーを物質が吸収すると、化学反応(分子の分解や結合)が起きます。
1ジュール(J)のエネルギーを吸収したときに、何モル(mol)の物質が変化したか?という「化学反応の効率(コストパフォーマンス)」を表すのが放射線化学収率です。昔は「G値」と呼ばれていました。
4. 空気カーマ率定数:距離と線量の橋渡し
- 単位: m²・J・kg⁻¹
- 対象: 放射性核種
ある放射能(A)を持つ線源から、距離(L)だけ離れた場所の「空気カーマ率(K)」を求めるための便利な定数です。
距離の逆二乗則(距離の2乗に反比例して放射線は弱くなる)を使った、以下の公式から単位が組み立てられています。
$$K = 空気カーマ率定数 \times \frac{A}{L^2}$$
この公式を「空気カーマ率定数 =」の形に変形すると、単位がどうなるか見てみましょう。
空気カーマ率は「カーマ(J・kg⁻¹)」の「率(s⁻¹)」なので、単位は J・kg⁻¹・s⁻¹ になります。また、放射能(A)の単位は s⁻¹ です。
$$( J \cdot kg^{-1} \cdot s^{-1} ) \times m^2 \div s^{-1} = m^2 \cdot J \cdot kg^{-1}$$
このように、丸暗記しなくても公式の形さえ知っていれば、いつでも自分で単位を導き出せます!
5. まとめ:今回の脳内メモリ節約ポイント
- 放射能(Bq = s⁻¹): 1秒間に壊れる「数」。
- 壊変定数(s⁻¹): 1秒間に壊れる「確率」。
- W値(J): 1つのイオン対を作るための「エネルギー」。
- 放射線化学収率(mol・J⁻¹): 1Jあたりに変化する物質量「モル」。
- 空気カーマ率定数(m²・J・kg⁻¹): 距離の逆二乗則の公式に当てはめるための定数。


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