第1章:放射線計測の統計学(3つの分布と標準偏差の基本公式)
放射線のカウント(計数値)は、実は「サイコロの目」や「パチンコのST(スペシャルタイム)の当たり」と同じで、完全に確率のギャンブルです。
同じ放射性物質を同じ検出器で1分間測っても、1回目は「100カウント」、2回目は「92カウント」、3回目は「105カウント」というように、毎回必ず値がばらつきます。このばらつき(ギャンブル性)を扱うのが「統計」の分野です。
まずは、国試に絶対出る「3つの確率の波(分布)」と「ばらつきの基本ルール」をめちゃくちゃ噛み砕いて解説します。
1-1. 3つの分布のステップアップ
国試では、「最初は二項分布だけど、条件が変わるとポアソン分布になって、最終的に正規分布になる」という簡略化(近似)の流れがよく問われます。
- 二項分布(にこうぶんぷ)
- イメージ:すべての根本にある、一番正確で細かい確率の計算です。コインの裏表や、サイコロを振るような、すべての確率のベースになります。
- ➡️ ポアソン分布
- イメージ:放射性物質の原子の数はものすごく多い(試行回数が多い)のに、1秒間に崩壊する確率はものすごく低いですよね。このように「チャンスは無限にあるのに、滅多に起きないレア現象」を扱うとき、二項分布をシンプルにサボって計算できるようにしたのがポアソン分布です。
- ➡️ 正規分布(せいきぶんぷ)
- イメージ:測定して得られたカウント数(計数値)が、100、1000、10000というように十分に大きくなったとき、最終的にきれいな左右対称の富士山型のグラフになります。これが正規分布です。
💡 国試の一言ロジック
矢印の順番(二項 ➡️ ポアソン ➡️ 正規)の通りに、数字が大きくなればなるほど計算が簡単(簡略化)になっていくと覚えておきましょう。
1-2. ルートNの魔法(計数の標準偏差)
正規分布(富士山型のグラフ)になったとき、私たちが得た生のカウント数(これを N と書きます)には、どれくらいの「ばらつき(誤差)」が含まれているでしょうか?
統計の世界では、このばらつきの幅のことを標準偏差(シグマ)と呼びます。 放射線の世界には、めちゃくちゃ美しい「ルートNの魔法」という基本公式があります。
$$
\sigma = \sqrt{N}
$$
これ、驚くほど簡単です。
例えば、機械が「100カウント」と表示したら、その中に含まれるばらつき(標準偏差)は、100にルートをつけた値、つまり「10」になります。
「10000カウント」表示したら、ルート10000で、ばらつきは「100」になります。
1-3. 3つの「的中確率(信頼区間)」とパチンコST理論
国試では、「得られたカウント数(N)に対して、標準偏差(シグマ)を何倍した幅の中に、本当の値が何%の確率で含まれているか」という、3つのセット数字がそのまま出題されます。
これはまさに「パチンコのSTの突入率・継続率のスペック計算」と同じロジックです!「この回転数(幅)まで回せば、これくらいの確率で当たり(本当の値)を引ける(カバーできる)」という枠の広さを表しています。
- N ± 1シグマ の幅(1倍の幅) ➡️ 68% の確率で的中!(ちょっと物足りないST継続率スペック)
- N ± 2シグマ の幅(2倍の幅) ➡️ 95% の確率で的中!(国試で一番よく狙われる、ほぼ外さない安心の超高継続スペック!)
- N ± 3シグマ の幅(3倍の幅) ➡️ 99.7% の確率でほぼ完璧に的中!(実質次回確定レベルの最強スペック!)
💡 覚え方(ゴロ合わせ)
「浪人(68)して、救護(95)されて、救急な(99.7)入院」
- 1シグマ ➡️ 68%(浪人)
- 2シグマ ➡️ 95%(救護)
- 3シグマ ➡️ 99.7%(救急な)
このパチンコSTスペックのような3つの確率の数字を押さえておけば、国試の文章題の数字引っ掛け(例:2シグマの範囲に含まれる確率は68%である、などのバツ選択肢)を一瞬で見破れるようになります!
第2章:計算問題の定番「計数率・変動係数・相対誤差」の使い分け
国試の計算問題でパニックになる一番の原因は、「今、手元にある数字が生のカウント数(N)なのか、それとも1分あたり・1秒あたりのスピード(計数率:n)なのか」がごちゃ混ぜになることです。
ここさえ整理できれば、あとは簡単な割り算だけです!
2-1. カウントとカウント率(計数率)の決定的な違い
まずは、この2つの言葉のイメージを完全に分けてください。
- 生の計数(N):ただの「合計カウント数」です。
- 計数率(n):測定時間(t)で割り算した、「1分あたり(または1秒あたり)のスピード」です。
$$
\text{計数率 } n = \frac{N}{t}
$$
そして、それぞれの「ばらつき(標準偏差)」の公式がこちらです。
① 生のカウント(N)のばらつき
第1章でやった「ルートNの魔法」そのままで、時間に左右されません。
$$
\sigma = \sqrt{N}
$$
② カウント率(n)のばらつき
「1分あたりのスピード」のばらつきを求めたいときは、生のばらつき(ルートN)を、測定時間(t)で割り算してあげます。
$$
\sigma_n = \frac{\sqrt{N}}{t}
$$
💡 超簡単なロジック
問題文を読んだときに、単位が「カウント(counts)」なら上の式、単位が「cpm(1分あたり)」や「cps(1秒あたり)」というスピードの単位になっていたら下の式を使う、と決めておくだけで一瞬で迷わなくなります!
2-2. 変動係数(CV)と相対誤差
国試では「変動係数を求めよ」「相対誤差を求めよ」という問題がよく出ますが、実はこれ、「呼び方が違うだけで、全く同じ計算」です!
どちらも、「得られたカウント数(N)に対して、ばらつき(ルートN)がどれくらいの割合(%)含まれているか」を計算しているだけです。パチンコで言えば、「投資額に対して、どれくらいのブレ(リスク)があるか」の割合を見ています。
公式は以下のようになります。
$$
\text{変動係数 } CV = \text{相対誤差} = \frac{\sqrt{N}}{N} = \frac{1}{\sqrt{N}}
$$
💡 中学生レベルの具体例で納得しよう!
もし、機械の画面に「100カウント」と表示されたら……
- ばらつきは、ルート100 = 10 です。
- 相対誤差は、全体の100に対してばらつきが10なので、10 ÷ 100 = 0.1(10%) になります。
もし、たくさん測って「10000カウント」と表示されたら……
- ばらつきは、ルート10000 = 100 です。
- 相対誤差は、全体の10000に対してばらつきが100なので、100 ÷ 10000 = 0.01(1%) になります。
見ての通り、たくさんカウントを稼げば稼ぐほど、全体のブレの割合(相対誤差・変動係数)はキュッと小さくなって、めちゃくちゃ精度の高い測定になることがわかりますよね。
第3章:国試の合否を分ける「誤差の伝播」と「正味の計数率」
実際の放射線測定では、測りたいサンプル(お宝)のカウントだけでなく、周りの空間に飛び交っている自然放射線などのノイズ(バックグラウンド:BG)も一緒に機械が数えてしまいます。
そのため、本当のデータを出すには「お宝+ノイズ」の合計から「ノイズ」を引き算しなければなりません。このように「別々に測った2つのデータの足し算や引き算をするとき、全体の誤差はどう変化するか」を扱うのが、国試の裏ボスである誤差の伝播(でんぱ)です。
3-1. 誤差の伝播:足し算も引き算も「二乗してルート」
結論から言います。
データA(ばらつきはシグマA)と、データB(ばらつきはシグマB)の2つを合体させるとき、足し算だろうが引き算だろうが、最終的な全体のばらつきは「二乗して足してルート」になります!
➕ 足し算(和)のばらつき
$$
(a \pm \sigma_a) + (b \pm \sigma_b) = (a + b) \pm \sqrt{\sigma_a^2 + \sigma_b^2}
$$
➖ 引き算(差)のばらつき
$$
(a \pm \sigma_a) – (b \pm \sigma_b) = (a – b) \pm \sqrt{\sigma_a^2 + \sigma_b^2}
$$
3-2. 実戦!本当のスピード(正味の計数率)を求める公式
国試の計算問題で最も美しく、配点が高いのがこの「正味(しょうみ)の計数率」の公式です。
サンプルの合計スピード(カウント率)から、ノイズ(BG)のスピードを引き算します。上の「引き算のルール」をそのまま当てはめると、以下の形になります。
$$
\text{正味の計数率と誤差 } n_s \pm \sigma_s = \left(\frac{N}{t} – \frac{N_b}{t_b}\right) \pm \sqrt{\frac{N}{t^2} + \frac{N_b}{t_b^2}}
$$
一見すると複雑でウッとなりますが、中身はただの「引き算」と、後ろは第2章でやった「カウント率のばらつき」をそれぞれ二乗して足し算しているだけです。パーツに分ければ怖くありません!
3-3. タイムマネジメント:一番効率の良い時間配分
国試では「限られた合計時間(T)の中で、サンプルとノイズ(BG)の測定時間をどう配分すれば、一番ばらつき(誤差)を小さくできるか?」という、実験のスケジュールを組むような問題が出ます。
これも、めちゃくちゃ綺麗な公式が準備されています。
$$
\frac{t}{t_b} = \sqrt{\frac{N}{N_b}}
$$
- t :サンプルの測定時間
- t_b :ノイズ(BG)の測定時間
- N :サンプルのカウント数
- N_b :ノイズ(BG)のカウント数
💡 一言ロジック
つまり、**「カウントがたくさん稼げる(お宝がいっぱいある)ほうに、ルートの比率の分だけ、時間を多めに配分してあげると一番効率が良い!」**ということです。
国試では、この公式を逆数にした引っ掛け(分母と分子が逆になっているバツ選択肢)が出ます。「時間は、カウントが多いほうにたくさんあげる!」というイメージを持っておけば、公式の上下がひっくり返るのを防げます。


コメント