悪性リンパ腫は、白血病と同じく「血液のがん」の一種だ。しかし、白血病が血液の中でバラバラに流れているのに対し、リンパ腫はリンパ節などで「しこり(腫瘤)」を作るのが特徴だ。
放射線技師の国家試験では、この「しこり」に対してどう効率的に、かつ安全に放射線を当てるかという歴史的な照射技術が問われる。まずは、リンパ腫の2大勢力である「ホジキン」と「非ホジキン」の決定的な違いから理解しよう。
第1章:【超重要】ホジキン vs 非ホジキンの完全比較
リンパ腫は、顕微鏡で見た時の細胞の顔つきによって大きく2つに分けられる。国家試験では、この2つの**「広がり方(転移のしかた)」と「予後」**の違いがよく狙われる。
| 項目 | ホジキンリンパ腫(HL) | 非ホジキンリンパ腫(NHL) |
| 日本の割合 | 約10%(珍しい・若者に多い) | 約90%(圧倒的多数) |
| 広がり方 | 連続的(隣のリンパ節へ順番に) | 非連続的(あちこちに飛び火) |
| 特徴的な細胞 | リード・ステルンベルグ細胞 | B細胞やT細胞の異常 |
| 予後(治りやすさ) | 非常に良い(治癒率が高い) | 種類によるが、HLよりは悪い |
| 主な治療法 | ABVD療法 + 放射線治療 | R-CHOP療法 など |
【思考ポイント:なぜ「広がり方」が放射線治療に直結するのか?】
- ホジキンリンパ腫(連続的): 「次は隣のリンパ節にいく」というルートが予想できる。だからこそ、後述する「マントル照射」のように**「次に転移しそうなエリアを先回りしてまとめて焼く」**という放射線治療が劇的な効果を発揮し、予後を非常に良くしている。
- 非ホジキンリンパ腫(非連続的): ルートが予想できず、いきなり胃や腸(節外病変)にポンッと飛んだりする。そのため、局所治療である放射線よりも、**全身を巡る抗がん剤(R-CHOP療法)**が治療の絶対的な主役となる。
第2章:診断の絶対ルール「Ann Arbor分類」
リンパ腫の進行度(ステージ)を表す際、胃がんや肺がんで使う「TNM分類」は使われない。代わりにAnn Arbor(アン・アーバー)分類を用いる。
【思考ポイント:なぜTNMを使わないのか?】
リンパ球は元々全身を巡るものなので、「原発(T)」という概念が馴染まない。そのため、**「横隔膜(おうかくまく)」**を境目にして、上半身と下半身のどちらか片方に留まっているか(I〜II期)、両方に広がっているか(III期)、他の臓器まで行っているか(IV期)でステージを決める独自のルールが必要なのだ。
第3章:放射線技師が覚えるべき「伝統の照射野」
ホジキンリンパ腫の治療において、かつて主流だった「先回りして広範囲を焼く」ための照射野の形は、国試の超頻出用語だ。
1. マントル照射(Mantle field)
- 範囲: 頸部、鎖骨上下、腋窩(わき)、縦隔、肺門のリンパ節をすべて含む。
- 【思考ポイント】 形が肩から掛ける「マント」に似ていることからこの名がついた。横隔膜より「上」のリンパ節を一網打尽にする方法だ。
2. 逆Y字(ぎゃくワイじ)照射
- 範囲: 腹部大動脈周囲、脾門部、骨盤内のリンパ節を含む。
- 【思考ポイント】 横隔膜より「下」のリンパ節をカバーする際、その形がアルファベットの「Y」を逆さにしたように見える。
3. 全節(ぜんせつ)照射(TNI)
- マントル照射と逆Y字照射を組み合わせ、全身の主要なリンパ節をすべて焼く最強の方法。
第4章:なぜ広範囲の照射は「過去のもの」になったのか?
現代では、これらの広範囲照射はほとんど行われない。なぜか?
- 理由:二次発がんのリスクリンパ腫が治った数十年後に、広範囲に放射線を当てたことが原因で「乳がん」や「肺がん」が新たに発生してしまうケースが多発した。特にホジキンリンパ腫は予後が良く「治った後、長く生きる」ため、この二次発がんが深刻な問題になったのだ。
- 現在の主流:Involved Field(インボルブド・フィールド)照射「がんがある場所」とその周辺だけに絞って当てる方法。化学療法の進歩により、放射線は「トドメの仕上げ」として最小限の範囲で使うのが現在のエビデンス(証拠)に基づいた治療である。

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