**【がん・腫瘍病態学⑪】**白血病:血液のがんと「造血幹細胞移植」の全貌

白血病は、骨髄(血液の工場)で血液細胞が作られる過程でがん化し、異常な細胞が全身の血管を巡る「血液のがん」である。

放射線技師の国家試験において、白血病は「どの種類か」によって**予後(治りやすさ)と、出番となる放射線治療(TBI、PCI、脾臓照射)**が明確に変わってくる。まずは白血病の基本分類を「予後のロジック」とともに整理しよう。

第1章:白血病の「4大分類」と予後の真実

白血病は、がん化した細胞の**「成長度合い(急性・慢性)」「種類(骨髄性・リンパ性)」**の組み合わせで、大きく4つに分類される。

【国試の急所:4大分類と予後マップ】

ただ名前を覚えるのではなく、「誰に多くて、治りやすいのか」をセットでインプットしよう。

  1. 急性骨髄性白血病(AML):
    • 特徴: 大人の急性白血病で最も多い。
    • 予後: 年齢によるが厳しい戦いになることが多い。強力な抗がん剤と、後述するTBI(全身照射)+骨髄移植が切り札となる。
  2. 急性リンパ性白血病(ALL):
    • 特徴: 小児に非常に多い。脳(中枢神経)へ転移しやすい。
    • 予後: 【子供は予後良好、大人は不良】 子供のALLは化学療法が劇的に効き、約80%が治癒する。
  3. 慢性骨髄性白血病(CML):
    • 特徴: 「フィラデルフィア染色体」という遺伝子の異常が原因。進行すると**脾臓(ひぞう)**が大きく腫れる。
    • 予後: 【極めて良好】 かつては不治の病だったが、「分子標的薬(イマチニブ等)」の登場により、薬を飲めば普通の寿命を全うできる時代になった。
  4. 慢性リンパ性白血病(CLL):
    • 特徴: 欧米人に多いが、日本人には非常に珍しい。進行が遅く、予後は良い。

【特殊型】成人T細胞白血病(ATL)

国試の「原因」を問う問題で必ず顔を出すのがこれだ。

  • 原因: ウイルス(HTLV-1)の感染が原因で起こる特殊な白血病。九州・沖縄地方に多い。
  • 予後:【極めて不良】 白血病の中でもトップクラスにタチが悪く、治癒が非常に難しい。
  • 【思考ポイント:なぜ特に日和見感染が強調されるのか?】 すべての白血病は、正常な白血球が減るため「感染症」にかかりやすくなる。しかしATLは、免疫軍の最高司令官である「T細胞」そのものががん化して狂ってしまう病気だ。そのため、他の白血病と比べても**「極端な免疫不全」**に陥りやすく、健康な人なら絶対に感染しないような弱いカビやウイルスにまで負けてしまう(日和見感染)。

第2章:白血病と「放射線治療」のリンク

白血病は全身を巡るため、治療の主役は「抗がん剤」だ。しかし、以下の3つのシチュエーションにおいて、放射線治療が極めて重要な役割を果たす。病名と照射法を完全にリンクさせよう。

1. 【AMLなど】骨髄移植のための「全身照射(TBI)」

急性白血病を治すための「造血幹細胞移植(骨髄移植)」を行う前には、**TBI(Total Body Irradiation)**が行われる。

  • 目的の再確認:
    1. 全身の白血病細胞を最後の一滴まで根絶やしにする。
    2. 患者自身の免疫を破壊し、他人の骨髄液(ドナー細胞)の拒絶反応を防ぐ。
    3. 骨髄の中に、新しい細胞が住み着くための「空き部屋」を作る。
  • 技術的配慮: 放射線に弱い「肺」への被ばくを抑えるための**肺遮蔽(しゃへい)と、ダメージを分散させるための分割照射(1日2回など)**が必須となる。

2. 【小児のALL】予防的全脳照射(PCI)

小児に多いALL(急性リンパ性白血病)では、抗がん剤で血液中のガンが消えたとしても、脳全体に放射線を当てる(中枢神経系予防照射)ことがある。

  • 【思考ポイント:なぜ脳に当てるのか?】 脳には、毒から脳を守るバリア**「血液脳関門(BBB)」**が存在する。このバリアは抗がん剤も弾き返してしまうため、白血病細胞が脳や脊髄の液の中に逃げ込んで生き延びてしまうのだ。これを防ぐために、物理的にバリアを突き抜ける「放射線」を頭蓋全体に当てるのである。

3. 【進行したCML】脾臓(ひぞう)への緩和照射

CML(慢性骨髄性白血病)などが進行すると、血液の処理工場である「脾臓」が異常に腫れ上がり(脾腫)、お腹を圧迫して激痛を引き起こすことがある。 この痛みを和らげ、脾臓を小さくする(緩和ケア)目的で、脾臓への局所的な放射線治療が行われる。

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