第1章:光子(X線・γ線)としての挙動と3つの公式
第1ページ目では質量を持つ「粒子(電子など)」の動きを見てきましたが、ここからは質量を持たない「光子(X線やγ線)」のルールについて解説します。
放射線技師が日々扱うX線は、波(電磁波)としての性質と、粒(光子)としての性質を併せ持っています。
国家試験では、この光子が持つ「エネルギー」「運動量」「波長」の3つを相互に変換する計算問題が頻出するため、ここで確実に関係性をマスターしましょう。
1-1. 光子のエネルギー(E)
光子のエネルギーは、その光が持つ「振動数(ν:ニュー)」に比例します。
振動数が多い(細かく振動している)光子ほど、高いエネルギーを持っています。
$$E = h \times \nu$$
- E:光子のエネルギー(単位:J)
- h:プランク定数
- ν:振動数
この公式が光子の最も基本的なエネルギーの式となります。
1-2. エネルギーと波長(λ)の反比例関係
光速(C)は、波長(λ:ラムダ)と振動数(ν)を掛け合わせたものです。
$$C = \lambda \times \nu$$
この式を変形すると「ν = C / λ」となります。
これを先ほどのエネルギーの式(E = h × ν)に代入すると、国試で最もよく使う以下の公式が導き出されます。
$$E = \frac{h \times C}{\lambda}$$
この式から読み取れる最も重要な放射線物理学のロジックは、「波長(λ)が短いほど、エネルギー(E)は高くなる」という反比例の関係です。
「短波長のX線=高エネルギーで透過力が強い」という臨床的な事実としっかり結びつけて暗記しましょう。
1-3. 光子の運動量(P)
光子には質量(M)がありません。
しかし、物質にぶつかって電子を弾き飛ばす(コンプトン散乱など)ことができるため、「勢い」である運動量(P)は存在します。
光子の運動量は、光子のエネルギー(E)を光速(C)で割ることで求められます。
$$P = \frac{E}{C}$$
さらに、この式の「E」に「h × ν」を代入すると以下のようになります。
$$P = \frac{h \times \nu}{C}$$
また、波長(λ)を使って運動量を表すと、以下のようにも変換できます。
$$\lambda = \frac{h}{P}$$
これは第1ページ目で学んだ「ド・ブロイ波(物質波)」の公式と全く同じ形になります。
つまり、質量がある電子でも、質量がない光子でも、「波長と運動量の関係」は共通しているということです。
公式をバラバラに暗記するのではなく、このように繋げて覚えることで、国試本番でのド忘れを防ぐことができます。
第2章:ミクロな粒子を支配する3大公式(クーロン・ローレンツ・遠心力)
光子や電子といったミクロな粒子は、電場や磁場の中で特定の「力」を受けながら運動します。
国家試験の電磁気学分野において、以下の3つの力学公式はパズルのピースのように組み合わせて出題されるため、それぞれの役割を整理しておきましょう。
2-1. クーロン力(電荷同士に働く力)
プラスとマイナスが引き合い、同じ符号同士が反発する力です。
原子核(プラス)と電子(マイナス)を結びつける結合エネルギーの根幹となる力でもあります。
$$F = \frac{1}{4\pi \varepsilon_0} \frac{Q_1 Q_2}{r^2}$$
- F:クーロン力(単位:N)
- ε0(イプシロンゼロ):真空の誘電率
- Q1、Q2:それぞれの電荷
- r:電荷間の距離
【国試でのロジック】
式の構造から、「距離(r)の2乗に反比例して力が弱くなる」という性質を問われることが多いため、数式の形そのものを視覚的に覚えておくことが重要です。
2-2. ローレンツ力(磁場の中を動く粒子が受ける力)
サイクロトロンなどの円形加速器で、粒子を曲げるために使われるのがこの力です。
磁場(磁石の力)の中を、電荷を持った粒子が横切って動くときに発生します。
$$F = e \times B \times v$$
- F:ローレンツ力(単位:N)※提供資料ではEと表記されていますが、一般的に力はF(Force)を用います。
- e(またはq):電荷
- B:磁束密度
- v:速度
2-3. 遠心力(円運動で外に飛び出そうとする力)
粒子がカーブを描いて飛ぶ(円運動する)際に、外側へ向かって働く力です。
$$R = \frac{M \times v^2}{r}$$
- R:遠心力(単位:N)※一般的にFを用いますが、資料に合わせRとしています。
- M:質量
- v:速度
- r:回転の半径
【国試でのロジック:サイクロトロンの原理】
国試の計算問題で最も頻出なのが、「ローレンツ力 = 遠心力」という等式を立てるパターンです。
粒子が綺麗な円を描いて加速器内を回るためには、内側に引っ張る磁場の力(ローレンツ力)と、外に飛び出そうとする力(遠心力)が釣り合っている必要があります。
「e × B × v = (M × v^2) / r」という式を自分で組み立てられるようになれば、計算問題の得点率は飛躍的にアップします。
第3章:物質との相互作用(平均自由行程)
放射線が物質の中を進むとき、何にもぶつからずに進める距離はランダムです。
しかし、「平均してどれくらいの距離を進めば、1回ぶつかる(相互作用を起こす)のか」を統計的に導き出すことができます。これを平均自由行程と呼びます。
3-1. 光子の平均自由行程(λ)
X線やγ線といった光子が、物質と散乱などの相互作用を起こすことなく直進できる平均距離です。
これは、物質の「線減弱係数(μ)」の逆数で求められます。
$$\lambda = \frac{1}{\mu}$$
- λ:光子の平均自由行程
- μ(ミュー):線減弱係数
【国試でのロジック】
線減弱係数(μ)が大きい物質(=放射線をよく遮蔽する、鉛など)ほど、この平均自由行程(λ)は短くなります。
「遮蔽されやすい物質の中では、光子はすぐにぶつかってしまうため、平均して進める距離が短い」とイメージすると、反比例の式がスッと頭に入ります。

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