RI内用療法は、診断用の「見る薬」ではなく、病巣を直接攻撃して破壊する**「治す薬」**が主役である。 国家試験では、診断用とは桁違いの「投与量」や、周囲への被ばくを防ぐための「管理ルール」、そして「ベータ線・アルファ線の違い」が頻出する。
1. 治療の絶対的エース:Na131I(ヨウ化ナトリウム)
甲状腺に集まるというヨウ素の性質を100%活かした、最も歴史があり効果的な治療法である。
【基礎データ】
- 放出放射線:ベータ線(606keV) + ガンマ線
- 💡 ポイント:治療の主役はベータ線。飛距離が数ミリと短いため、周囲の正常細胞を傷つけずに甲状腺だけを焼くことができる。また、ガンマ線も出すため、治療後に「薬がどこに届いたか」をカメラで撮る(イメージング)ことも可能。
- 物理的半減期:8日(有効半減期は約6日)
【対象と用量(ここが国試の狙い目!)】
- バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
- 投与量:222MBq 程度。
- 💡 ポイント:外来(通院)で治療が可能。
- 分化型甲状腺がん(転移検索・治療)
- 投与量:3.7GBq(3700MBq)以上。
- 💡 ポイント:投与量がバセドウ病の10倍以上と非常に多いため、周囲への被ばくを防ぐため**「専用の特別病室(鉛で遮蔽された部屋)」に約3日間入院**する必要がある。
- アブレーション(残存甲状腺破壊)
- 手術で取りきれなかった微小な甲状腺組織を、131Iの放射線で焼き切ること。
💡 攻略の鍵:甲状腺吸収線量の計算式とその「理屈」
国試で出題される以下の式を、暗記ではなく「イメージ」で理解しよう。
甲状腺推定吸収線量 = 135 × { (24時間摂取率 × 投与量 × 有効半減期) / (3.7 × 甲状腺推定重量 × 800) }
この式は、結局のところ**「どれだけ濃く、長く放射線が当たったか」**を計算しているだけである。
- 1. 分子(上側):エネルギーの総量 分子にあるものは、増えれば増えるほど「被ばく(吸収線量)」が増える要素。
- 投与量:入れる薬の量。多いほど線量が増える。
- 24時間摂取率:入れた薬のうち、何%が甲状腺に届いたか。
- 有効半減期:甲状腺の中にどれくらい長く留まったか。
- 2. 分母(下側):エネルギーの分散 分母にあるものは、増えれば増えるほど「被ばく(吸収線量)」が減る要素。
- 甲状腺推定重量:ターゲットの大きさ。
- 3. 定数(135、3.7、800など) これらは、単位を揃えるための「調整役」に過ぎない。
【まとめ】 結局この式は、**「(届いた薬の総パワー × 居座った時間)÷ ターゲットの重さ」**を計算しているだけ。こう考えると、「重量は分母だな」「半減期は分子だな」と迷わずに済む。
2. 131I-MIBG 治療(神経内分泌腫瘍の標的治療)
【基礎データ】
- 対象:褐色細胞腫、神経芽細胞腫、カルチノイドなどの「神経内分泌腫瘍」。膵内分泌腫瘍(インスリノーマなど)にも集積する。
- 前処置(超重要!):甲状腺ブロック(ルゴール液などの投与)
- 💡 なぜ?:目的は「神経の腫瘍」を叩くことだが、薬剤に含まれるフリーの131Iが、正常な甲状腺に集まってしまうと、甲状腺が被ばくして壊れてしまう。それを防ぐために、あらかじめ「普通のヨウ素」で甲状腺をパンパンに満たしておく(ブロックする)必要がある。
3. 骨転移への「除痛」と「攻撃」:89Sr と 223Ra
どちらも「骨転移」をターゲットにするが、役割が違う。
① 89SrCl(ストロンチウム-89):疼痛緩和
- 放出放射線:ベータ線
- 特徴:カルシウムと似た挙動で骨転移部位に集まる。90%以上は尿排泄される。
- 対象:転移性骨腫瘍(特に乳がんと前立腺がんの転移に効果が高い)。
- 役割:ガンを消すというより、転移による**「耐え難い痛み(骨痛)」を和らげる(除痛)**のが目的。
- 期間:効果が出るまで1〜2週間かかり、持続時間は3〜6ヶ月。反復投与は3ヵ月以上空ける。
② 223Ra(塩化ラジウム):ゾフィーゴ
前立腺がんの骨転移治療において、今最も注目されている薬剤である。
- 商品名:ゾフィーゴ
- 放出放射線:アルファ線
- 対象:骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌
- 💡 ポイント:なぜ「アルファ線」で「前立腺がん」なのか? ラジウムは周期表でカルシウム(Ca)の真下に位置し、体の中では「カルシウムの親戚」として振る舞い、骨代謝が活発な場所(転移巣)に勝手に集まる。そこに、ベータ線より数千倍強力なエネルギーを持つアルファ線を至近距離から叩き込む。アルファ線は飛距離が極めて短いため(細胞数個分)、周囲の正常な骨髄を傷つけることなく、骨に転移したがん細胞だけを効率よく破壊し、**「延命効果」**を狙うことができる。
4. 90Y-ゼバリン:放射性免疫療法
【基礎データ】
- 正式名称:90Y抗CD20モノクローナル抗体(ゼバリン)
- 放出放射線:ベータ線(2.27MeV)
- 対象:再発・難治性のCD20陽性低悪性度または濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫
💡 ポイント:ミサイル療法の極致
がん細胞だけにある目印(CD20)を見つけるマウス由来の「モノクローナル抗体」に、攻撃用の「90Y(イットリウム90:ベータ線放出)」を標識(くっつけた)したもの。 「目印を見つける能力」と「攻撃能力」を合体させた、まさにターゲットを逃さないミサイルのような治療法(放射性免疫療法)である。

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