第1章:装置および画像再構成に起因するアーチファクト
核医学検査において、ハードウェアの不具合や数学的な画像再構成アルゴリズムの特性によって生じる偽像(アーチファクト)である。国家試験では「画像所見」と「原因」の結びつきが頻出となる。
1-1. リング状アーチファクト
再構成されたSPECTの断層像において、中心から同心円状(バウムクーヘンのような輪郭)に発生する偽像である。主にガンマカメラの調整不足や機械的なズレが原因で生じる。
- 検出器の均一性が低い(感度不均一)
- 回転中心のずれ(CORのズレ)
【補足・国試の要点】 日々の品質管理(QC)において、均一性補正データの取得や回転中心のキャリブレーションを怠ると発生する。特に高カウントのデータを収集する際に目立ちやすいという特徴がある。
1-2. 光電子増倍管(PMT)不良による欠損像
画像上に 数cmの円形欠損像 がポッカリと抜け落ちたように現れるアーチファクトである。
ガンマカメラ内部に敷き詰められている 光電子増倍管の不良(故障や出力低下) が直接的な原因である。PMTが機能していない箇所では光信号を電気信号に変換できず、カウントがゼロとなるため、そのPMTの形に沿った円形の欠損が生じる。
1-3. ストリークアーチファクト
SPECT画像において、特定の臓器や部位から放射状に筋のような線が伸びる偽像である。
膀胱や注射部位など、極端な 高集積部位 が視野内に存在する場合に、FBP再構成法(重畳積分逆投影法) を用いて画像処理を行うと発生する SPECT特有のアーチファクト である。
【補足・国試の要点】 投影データをそのまま逆投影するFBP法の数学的な限界によって生じる。現在の臨床現場では、これを防ぐために逐次近似画像再構成法(OSEM法など)を使用することが一般的である。
1-4. ギブス(Gibbs)アーチファクト
画像のエッジ(輪郭)部分に、本来存在しない波紋のような線や強調された縁取りが現れる現象である。
主に PET において、分解能補正 などの強力な高周波強調フィルタ処理を行う際に現れる。急激にカウントが変化する境界部分で計算上のエラー(オーバーシュート)が起き、被写体の周囲が強調されるアーチファクト となる。
第2章:患者・解剖学的要因によるアーチファクト(心筋血流SPECT)
心筋血流SPECTにおいて、患者の体格や生理的な反応によって生じるアーチファクトである。これらは実際の虚血(血流低下)と誤認されやすいため、読影時の鑑別が極めて重要である。
2-1. 減弱アーチファクト(Attenuation)
体内から放出されたγ線が、カメラに到達する前に周囲の軟部組織によって吸収・散乱され、画像上でカウントが低下して欠損像のように見える現象である。
- Breast attenuation(乳房減弱)
- 乳房による前壁の欠損像 として観察される。女性患者で特に注意が必要である。
- Diaphragmatic attenuation(横隔膜減弱)
- 横隔膜挙上による下壁の集積低下 として観察される。肥満体型の患者や男性で頻繁に見られる。
【補足・国試の要点】 これらが真の虚血による欠損なのか、単なるアーチファクトなのかを鑑別するため、臨床では「腹臥位(うつ伏せ)撮影」を追加したり、CTを用いた「吸収補正(減弱補正)」を行ったりするアプローチがとられる。
2-2. アップワードクリープ(Upward creep)
運動負荷直後に収集を開始した画像において、心筋の下壁から後壁にかけて人工的な血流低下(欠損像)が生じる現象である。
201TlCl などの核種を用い、運動負荷後 に激しい呼吸をしている状態で撮影を開始すると、呼吸が落ち着くにつれて横隔膜の位置が徐々に下がり、相対的に 心臓が頭方向への移動 を起こす。この撮影中の「臓器の移動」によってデータに矛盾が生じ、アーチファクトとなる。
【補足・国試の要点】 運動負荷後の心拍数や呼吸が十分に落ち着いてから(約10〜15分程度待機してから)撮影を開始することで防ぐことができる。技師の適切なタイミング判断が問われる現象である。

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