【循環器系】心臓の構造・血流・弁:ポンプ機能の完全マスター

循環器:心臓の構造・弁・血液のルート

【鉄則】CT画像は「仰向けを下から覗く」。心臓の一番前は「右室」

心臓の解剖で最初に立ちはだかる壁が、CTの横断写真(アキシャル断)だ。教科書の正面図をそのまま輪切りにしても、実際の画像とは一致しない。まずは以下の大前提を頭に叩き込め。

  • 大原則:患者は「仰向け」で、それを「足元(下)から覗き込んでいる」
    • 画面の**「左側が患者の右半身」「右側が患者の左半身」**になる(左右が反転する)。
    • 画面の**「上が前(胸側)」「下が後ろ(背中側)」**である。
  • 心臓の前後関係:心臓は胸の中で少し左にねじれるように傾いている。これをCTの原則に当てはめると、順番は以下のようになる。前(胸側):右心室 > 右心房 > 左心室 > 後(背中側):左心房
    • 一番前(胸骨の真裏): 右心室(RV)。交通事故でハンドルに胸を強く打った時、一番ダメージを受けやすい。
    • 一番後ろ(背骨側・食道の前): 左心房(LA)

1. 部屋の役割と血液のルート

心臓の中の血流は「一本道」だ。心房と心室の役割、そして血管の名前のルールを直感的に捉えよう。

  • 部屋の役割の覚え方:
    • 「室(しつ)」は「出(しゅつ)」:は、血液を外へ出すための強力なポンプ。
    • 「房(ぼう)」は「戻る」:は、全身や肺から血液が戻ってくる部屋。
  • 血管の名前のルール(ひっかけ注意!): 血管の名前は「中身の血がキレイか」ではなく、**「どこに向かうか(目的)」**で決まっている。
    • 動脈: 心臓から出て、目的の臓器に届くための道
    • 静脈: 臓器での仕事を終え、心臓へ戻ってくる道
    ※最大のポイント: 右心室から出る血管は、中身が汚れた血(静脈血)であっても、「肺」という目的地に向かって心臓を出ていく道だから**『肺動脈』と呼ぶ。逆に、肺から心臓へ戻ってくる血管は、中身が酸素たっぷりの動脈血でも『肺静脈』**になる。ここを理解すれば暗記の迷いは消える。
  • 右心系(静脈血のルート):全身から肺へ
    1. 上・下大静脈(全身からの汚れた血が戻る)
    2. 右心房(RA)
    3. 三尖弁(右房室弁)
    4. 右心室(RV)
    5. 肺動脈弁
    6. 肺動脈 → 肺という目的地へ向かう(※中身は静脈血)
  • 左心系(動脈血のルート):肺から全身へ
    1. 肺静脈(肺から心臓へ戻る道。※中身はキレイな動脈血)
    2. 左心房(LA)
    3. 僧帽弁/二尖弁(左房室弁)
    4. 左心室(LV) ※全身に血を出すため、心筋の壁が最も分厚い
    5. 大動脈弁
    6. 大動脈 → 全身の臓器へ向かう

2. 4つの「弁」の構造と語呂合わせ

心臓には血液の逆流を防ぐための「弁」が4つある。国家試験で絶対に落としてはならないのが**「僧帽弁(左房室弁)だけが2枚の弁で、残りの3つはすべて3枚の弁である」**という事実だ。

  • 房室弁(心房と心室の間):
    • 三尖弁(さんせんべん): の房室間にある。名前の通り「3枚」の弁。
    • 二尖弁(にせんべん)/僧帽弁(そうぼうべん): の房室間にある。これだけが**「2枚」**の弁。
  • 動脈弁(心室と動脈の間):
    • 大動脈弁: 左心室と大動脈の間。3枚の半月状の弁。
    • 肺動脈弁: 右心室と肺動脈の間。3枚の半月状の弁。

【最強の語呂合わせ】

「う(右)さん(三)くさい、左に(二)僧(僧帽弁)」

これで右が3枚、左が2枚(僧帽弁)であることを絶対に忘れない。


3. 心室収縮期のポンプ機能

心室がギュッと収縮して血液を「出す」時、弁はどう動くか。物理的なポンプの動きをイメージすれば丸暗記は不要だ。

  • 心室が収縮する時(血液を外へ出す時):
    • 出口のドアである**「大動脈弁」と「肺動脈弁」は開く**。
    • 後ろのドアである**「房室弁(三尖弁・僧帽弁)」は閉じる**(※閉じないと、戻る部屋である心房へ血液が逆流してしまうため)。

心臓の構造・血流まとめ表

項目重要な特徴・キーワード
CTの前後関係前:右心室 > 右心房 > 左心室 > 後:左心房
部屋の役割室=出すポンプ、房=戻る部屋
左心室(LV)全身へ血液を出すため、壁が最も厚い
僧帽弁(左房室弁)唯一の**「2枚(二尖弁)」**。その他はすべて3枚
三尖弁(右房室弁)右心房と右心室の間(うさんくさい)
心室の収縮時動脈弁(出口)は開く、房室弁(逆流防止)は閉じる

循環器:冠動脈の走行と略図の描き方

休むことなく全身へ血液を送り続ける心臓。その強靭な「心筋」自体に、酸素と栄養を供給するための専用の血管が**「冠動脈(かんどうみゃく)」**である。大動脈の根元(大動脈弁のすぐ上)から分岐し、心臓を王冠(冠:かんむり)のように取り囲むためこの名がついた。

1. 冠動脈の「3本柱」を暗記する

冠動脈の走行は、大きく分けて右側に1本、左側に2本(根本は1本)の計3本のメインストリートで構成されている。画像診断では、これらのアルファベット略語がそのまま飛び交うため、必ずセットで覚えること。

① 右冠動脈(RCA:Right Coronary Artery)

  • 走行: 大動脈の右側から出て、心臓の右側(右房と右室の間)をぐるっと回り込み、心臓の「下(下壁)」へ向かう。
  • 役割: 主に右心室と、心臓の下側を養う。

② 左冠動脈(LCA:Left Coronary Artery)

大動脈の左側から出る太く短い幹を**「左主幹部(LMT)」**と呼ぶ。これがすぐに以下の「2本」に枝分かれする。

  • 左前下行枝(LAD:Left Anterior Descending)
    • 走行: 心臓の「前面」を、左右の心室の境界(心室中隔)に沿ってまっすぐ下へ降りていく。
    • 役割: 全身へ血液を押し出すための最重要エンジンである**「左心室の前面」**を養う。ここが詰まると命に関わるため、最も重要な血管とされる。
  • 左回旋枝(LCX:Left Circumflex)
    • 走行: 左心室の外側をぐるっと回り込むようにして、心臓の「裏側(後壁)」へ向かう。
    • 役割: 左心室の側壁や後壁を養う。

2. 【実践】冠動脈の略図を描く

アンギオ(血管造影)でモニターに映るグニャグニャの血管を読み解くには、まず「正面から見た基本の形」を頭の中に作ることだ。以下の手順で白紙に描いてみよう。

  1. 大動脈の根元を描く: 画面の中央上に「〇」を描く。
  2. RCA(右冠動脈)を描く: 〇の右側から、ひらがなの「し」のように、右下へ大きく回り込む線を引く。
  3. LMT(左主幹部)を描く: 〇の左側から、短い太い線を左へピッと出す。
  4. LADとLCXを描き分ける:
    • LMTの先端から、真下(少し右下寄り)にまっすぐ長い線を引く。これが**LAD(左前下行枝)**だ。
    • LMTの先端から、左の輪郭に沿って外側へ回り込む線を引く。これが**LCX(左回旋枝)**だ。

【補足】現場で必須となる「AHA分類」について


国家試験を終え、いざ病院で働き始めると、医師や先輩技師たちは「RCA」や「LAD」という言葉だけでなく、**「#7(セグメント7)が詰まってるね」「#2の狭窄」**といった数字で会話をし始める。

これはアメリカ心臓協会(AHA)が定めた**「冠動脈の番号分類(1番〜15番)」**である。血管の「根元・中間・先」を細かく数字で区分けした世界共通のルールだ。 学生のうちは、まず「RCA、LAD、LCX」の3つの走行と役割を完璧にイメージできることが最優先。番号(AHA分類)は、国試に合格して現場に出てから叩き込まれる「プロの言語」だと思っておけばいい。

詳細こちらAHA分類

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