【造影検査とIVR】血管系IVRとカテーテル技術の完全攻略

第1章の「管(消化管・尿路など)」に対するアプローチに続き、第2章では「血管」の中から病気を治す、最前線の治療技術である血管系IVR(インターベンショナル・ラジオロジー)を攻略します。

命に関わる治療が多いため、使用するデバイス(道具)の役割や、「広げるのか、詰めるのか」という治療のロジックが頻出します。


1. IVRの基本作法:血管への侵入と「黄金ルート」

血管内にカテーテルを安全に進めるための絶対的な基本手技とルートを押さえましょう。

■ Seldinger(セルジンガー)法

  • ロジック:いきなり太いカテーテルを血管に突き刺すと大出血します。そのため、まずは細い針を刺し、その中にガイドワイヤー(X線に写る誘導用の細い針金)を通します。針を抜いた後、血管内に残ったガイドワイヤーに沿わせる形でカテーテルを滑り込ませる、非常に安全な挿入法です。
  • 特徴:経皮的に大動脈へ「逆行性」にカテーテルを挿入する際の基本テクニックです。

■ カテーテルの「黄金ルート」

心臓カテーテル検査などで、足の付け根から心臓へ向かう王道のルートです。順番が国試でよく問われます。

  1. 大腿動脈(足の付け根からスタート)
  2. 外腸骨動脈
  3. 総腸骨動脈
  4. 腹大動脈
  5. 胸部大動脈
  6. 大動脈弓
  7. 心臓(ゴール!)

■ 【絶対禁忌】血管内に「油」はNG!

  • 原則:血管系の造影には必ずヨード系造影剤(水溶性)を使用します。
  • ロジック:第1章の子宮卵管造影(HSG)では「油性ヨード剤」を使いましたが、これを血管内に注入すると、油の滴が毛細血管に詰まり、致死的な塞栓症を引き起こすため絶対に使用不可です。

2. 血管を「広げる・通す」治療

細くなったり詰まったりした血管を、内側から押し広げる治療です。

■ 血管形成術(PTA)と PCI

  • PTA(経皮経カテーテル血管形成術)
    • 対象:動脈硬化症による狭窄や、腎血管性高血圧症など。
  • PCI(経皮的冠動脈インターベンション)
    • 対象:心臓を栄養する「冠動脈」の狭窄(狭心症や心筋梗塞)。
    • 手技のロジック
      • バルーン拡張:風船で内側から押し広げる。
      • ステント留置:金属の網の筒を置いて、再び狭くなるのを防ぐ。
      • ロータブレーター:石灰化してガチガチになった狭窄部位を、高速回転するドリルで「掘削」する。

■ PTR(血栓溶解術)

  • ロジック:血栓(血の塊)を溶かす薬を注入して、血流を再開させる治療です(経皮的なものと外科的なものがあります)。

3. 血管を「詰める」治療(塞栓術)

逆に、出血を止めたり、腫瘍を「兵糧攻め」にして壊死させるために、意図的に血管を塞ぐ治療です。

■ 肝細胞癌に対する治療(TAE / TACE)

肝臓がんは、主に「肝動脈」から豊富な栄養をもらって増殖します。

  • TAE(経カテーテル動脈塞栓術) / TACE(化学塞栓術)
    • ロジック:がんを養っている動脈にカテーテルを進め、塞栓物質を注入して血流をストップ(兵糧攻め)させます。TACEの場合は抗がん剤も一緒に注入します。
    • 塞栓物質ゼラチンスポンジなどがよく使われます。これは数週間で溶ける「一過性」の塞栓物質です。

■ 永久塞栓と「PEIT」

  • ロジック:絶対に再開通させたくない場合(永久塞栓)には、強力な無水エタノールなどを使用します。
  • PEIT(経皮的エタノール注入療法):肝臓がんなどに、体の外から直接針を刺してエタノールを注入し、がん細胞を凝固壊死させる治療です。

■ 出血源の止血と動脈瘤

  • 骨盤骨折:交通事故などで骨盤を骨折すると、大量出血でショック死する危険があります。塞栓術で早急に出血源を止めます。
  • 脳動脈瘤
    • コイル塞栓術:カテーテルで瘤(こぶ)の中にプラチナ製のコイルを詰め込み、破裂を防ぐIVR治療。
    • クリッピング:こちらは外科手術で、瘤の根元をクリップで挟む方法です。

4. 心臓の評価とその他の特殊なIVR

カテーテルは治療だけでなく、心臓の「機能」を正確に測るための究極の検査ツールでもあります。

■ 心臓カテーテル検査の「左右」の違い

  • 左心系造影
    • 目的:心臓の「ポンプの力」を見る。
    • 手技:左心室の拡張末期圧を測ったり、左室造影を行って「駆出率(どれくらい血液を押し出せているか)」を測定します。
  • 右心系造影(スワンガンツカテーテル)
    • 目的:全身の「血行動態(プレッシャー)」を見る。
    • 手技:先端に風船がついたスワンガンツカテーテルを肺動脈まで進め、肺動脈楔入圧などの血圧や、心拍出量を測定します。重症患者では留置したまま監視することもあります。

■ 下肢静脈血栓と「下大静脈フィルタ」

  • ロジック:足の静脈にできた血栓(エコノミークラス症候群など)が血流に乗って肺に飛ぶと、致死的な肺血栓塞栓症を引き起こします。
  • 治療(下大静脈フィルタ留置術):血栓が肺へ飛んでいくのを防ぐため、通り道である下大静脈に「傘」や「網」のような形のフィルターを留置して血栓をキャッチします。

■ 不整脈に対する治療

  • カテーテルアブレーション
    • ロジック:異常な電気信号を出している心筋の一部を、カテーテルの先端から高周波を流して「焼灼(焼く)」し、不整脈を根治する治療です。

■ 大動脈瘤に対する治療

  • ステントグラフト治療:人工血管(グラフト)に金属の骨組み(ステント)を縫い付けたものをカテーテルで運び、大動脈瘤の内側から貼り付けるように展開して破裂を防ぐ、低侵襲な治療です。

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