第1章:医用モニタ品質管理(QC)の基本ルール
デジタル画像を表示するモニタは、時間が経つと明るさやコントラストが変化してしまいます。正しく診断を行うためには、モニタの状態を常に一定に保つ品質管理(QC:Quality Control)が不可欠です。
1-1. ガイドラインと規格名
国家試験でよく問われる「ルール」の名前です。
- JESRA(ジェズラ)Japan Engineering Standards of Radiological Amaging-systemsの略です。日本画像医療システム工業会が定めた「医用画像表示モニタの品質管理に関するガイドライン」のことを指します。
- JIS T 62563-1日本の工業規格(JIS)において、医用表示システムの受入試験および不変性試験を規定している番号です。
1-2. 2種類の品質試験(受入試験 vs 不変性試験)
モニタの点検は、その「タイミング」によって2つの名前に分かれます。
- 受入試験(うけいれしけん)新しいモニタを病院に導入した直後に行う試験です。メーカーが公称している性能(仕様)をしっかり満たしているかを確認し、今後の点検の基準(ベースライン)を決定します。
- 不変性試験(ふへんせいしけん)導入した後、定期的(毎日、毎月、毎年など)に行う試験です。受入試験で決めた基準から「状態が変化していないか(=不変であるか)」をチェックするのが目的です。
1-3. 評価の「やり方」による分類
「人間の目」で見るか、「機械」で測るかの2パターンがあります。
- 目視評価(もくしひょうか)TG18-QCなどの「テストパターン」をモニタに表示し、検査者が自分の目で見て「歪みはないか」「文字が読めるか」などを判定します。
- 器具測定(きぐそくてい)輝度計(きどけい)や色度計(しきどけい)といった専用のセンサーをモニタに貼り付けて、数値(cd/$m^2$など)として厳密に測定します。
第2章:目視評価と器具測定(何を使って何を測る?)
品質管理の実践では、「人間の目」でチェックする項目と、「専用の器具(輝度計など)」を使って数値で測る項目の仕分けが非常に重要です。
ここでは、国家試験で絶対に迷わなくなる「一発暗記のロジック」をご紹介します。
2-1. 【暗記ハック】目視か?器具か?の見分け方
試験で「これは器具測定である。〇か×か?」と聞かれたら、以下の基準で判断してください。
① 「輝度」「色度」という言葉が入ったら100%器具(機械)!
光の強さや正確な色は、人間の目では「なんとなく」しかわかりません。
- 輝度(きど):最大輝度、輝度比、輝度均一性
- 色度(しきど):色の正確さこれらは専用の輝度計や色度計を使わないと、正確な数値($cd/m^2$など)が出せません。
② 「コントラスト」は「輝度の差」だから器具!
「コントラスト応答」という言葉が出てきたら、それは「白と黒の明るさのステップが正しいか」を測るものです。つまり「明るさ(輝度)」のデータなので、これも器具測定の出番です。
③ 「形・ゴミ・細かさ」に関するものは目視(人間)!
機械で測るよりも、人間がパッと見たほうが早いものは目視です。
- 幾何学的歪み:「画面の形」が歪んでいないか?
- アーチファクト:画面に「ゴミ(ノイズ)」がないか?
- 解像度:画像がどれだけ「細かい(細かさ)」か?
★ここがポイント!
解像度は「細かさ」を確認する作業です。明るさや色のデータではないので、テストパターンの細い線がしっかり見えているかを人間の目で判定します。
2-2. 【重要】評価項目まとめ表
| 評価項目 | 分類 | 覚え方のコツ | 主なテストパターン |
| 全体評価 | 目視 | まずは「目で見て」全体確認 | TG18-QC |
| アーチファクト | 目視 | 「ゴミ」がないか目で探す | TG18-QC / UN80 |
| 幾何学的歪み | 目視 | 「形」が曲がっていないか確認 | TG18-QC |
| 解像度 | 目視 | 線の「細かさ」を目でチェック | Cx / ラインペア |
| 最大輝度・輝度比 | 器具 | 「輝度」の文字があるから機械 | 輝度計 |
| コントラスト応答 | 器具 | 明るさ(輝度)の差だから機械 | 輝度計 |
| 色度 | 器具 | 「色度」の文字があるから機械 | 色度計 |
第3章:TG18-QCパターンの「見たまま」攻略法(全要素網羅)
目視評価の主役、TG18-QCパターン。画像にある複雑な要素も、その形や場所と「覚え方」をセットにすれば、パズルを解くようにマスターできます。

3-1. 【中心部】明るさと階調(輝度)のチェック
- 16段輝度パッチ
- 見た目:中心を囲む四角いパネル。
- 覚え方:明るさが違うパネルが「16個」並んでいるからこの名前。
- 5% / 95% 輝度パッチ
- 見た目:真っ黒(0%)と真っ白(100%)の中にある小さな四角。
- 覚え方:5%と95%の「絶妙な明るさ」が重なっている場所。
- グレースケールバー
- 見た目:左右にある、白から黒へのグラデーション棒。
- 役割:色の変化(トーン)が滑らかかを確認。
3-2. 【文字・細かさ】解像度のチェック
- Cxパターン
- 見た目:四隅や中央にある網目模様。
- 覚え方:「C」の中に「x」が入っているからCx!
- 低コントラスト文字
- 見た目:下部にある「QUALITY CONTROL」の文字。
- 役割:背景と色が近い(コントラストが低い)文字が読めるかチェック。
- ラインペアパターン
- 見た目:パターンの端にある、非常に細かいシマシマ。
- 役割:どれだけ細かい線まで見分けられるか(限界解像度)を確認。
3-3. 【歪み・にじみ】画面精度のチェック
- クロストーク要素
- 見た目:上下の端にある白黒反転したような帯。
- 覚え方:名前の通り、「×(クロス)」の形をイメージ!
- 役割:明るい部分が暗い部分に影響を与えていないか(にじみ等)を確認。
- 画歪み(えずみ)・直線性要素
- 見た目:画面全体の格子状の白線。
- 役割:線が曲がっていないか(形が正しいか)をチェック。
- ビデオ特性要素
- 見た目:よく見るとビデオデッキに似てない? 上部にある、白から黒へ段階的に変わる横棒。
- 役割:映像信号が正しく再現されているかを確認。

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