[【脳・神経系】神経系の全体構造:中枢神経と末梢神経の分類]

  1. 第1章:神経系の全体構造と脳の進化
    1. 1-1. 神経系の構成
    2. 1-2. 脳の分類と重量
    3. 1-3. 各部位の役割と「進化のストーリー」
  2. 第2章:大脳半球の区分と機能・重要なくぼみ(溝)
    1. 2-1. 大脳半球の5つの区分(葉)
    2. 2-2. 2大重要な溝(裂)
      1. ① 中心溝(ローランド裂)
      2. ② 外側溝(シルビウス裂)
  3. 第3章:大脳基底核・脳幹・間脳:運動調整と生命維持の中枢
    1. 3-1. 大脳基底核:運動を微調整するフィルタリング中枢
      1. 大脳基底核の構成公式
      2. 大脳基底核の障害で起こる2大疾患
    2. 3-2. 脳幹:生命維持のラスト砦(中脳・橋・延髄)
      1. ① 中脳(ちゅうのう)
      2. ② 橋(きょう)
      3. ③ 延髄(えんずい)
    3. 3-3. 間脳:感覚のゲートと恒常性の指令塔(視床・視床下部)
  4. 第4章:脳脊髄液(CSF)の循環システムと髄膜の3層構造
    1. 4-1. 脳脊髄液(CSF)の役割と産生
      1. 脳脊髄液が存在する3つの理由(役割)
      2. どこで作られるのか?
    2. 4-2. 【一発暗記】脳脊髄液の循環ルート
      1. 脳脊髄液の流路
      2. 試験直前に役立つ!完璧な順序固定型ゴロ合わせ
    3. 4-3. 頭の膜(髄膜)の3層構造
    4. 4-4. 【最重要】硬膜外血腫 vs 硬膜下血腫のCT画像ロジック
      1. 硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)
      2. 硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)
  5. 第5章:感覚器の解剖:内耳の音響伝導と外眼筋の支配神経
    1. 5-1. 内耳:側頭骨内に潜む聴覚と平衡覚のセンサー
      1. 音が脳に伝わるまでの経路と「卵円窓」のロジック
      2. 内耳ルートの一発暗記ゴロ
    2. 5-2. 外眼筋:眼球を動かす6本の筋肉と3つの支配神経
      1. 外眼筋の6つの種類と主な作用
      2. 【超重要】外眼筋の支配神経ロジック

第1章:神経系の全体構造と脳の進化

私たちの身体をコントロールする神経系は、複雑に見えて非常に美しい階層構造を持っています。

国家試験では、それぞれの部位が「何を担っているか」だけでなく、全体の中でどのような位置づけにあるのかを体系的に理解しているかどうかが問われます。

まずは、すべての土台となる神経系の全体像と、脳の基本的な構成からマスターしていきましょう。

1-1. 神経系の構成

身体の内外から集まる情報を処理し、適切な指令を出す神経系は、大きく中枢神経系末梢神経系の2つに大別されます。

  • 中枢神経系情報を統合・判断して身体全体へ命令を下す、いわば「司令塔」です。 ここには脊髄が含まれます。
  • 末梢神経系司令塔である中枢と、全身の筋肉や器官をつなぐ「伝達経路(電線)」です。 自分の意思で動かせる運動に関わる体性神経と、内臓や血管を無意識にコントロールする自律神経(交感神経・副交感神経)に分かれます。

放射線技師の国家試験対策としては、CTやMRIの画像に写る構造物のほとんどが「中枢神経系」である脳と脊髄であり、そこから手足に伸びていく電線が「末梢神経系」である、というイメージをまず頭に叩き込んでください。

1-2. 脳の分類と重量

中枢神経系の中心である「脳」は、解剖学的に以下のように分類されます。

成人の脳重量は約1300gであり、この数値自体も基礎知識として覚えておきましょう。

  • 前脳脳の最上部に位置し、大脳間脳を合わせた領域を指します。
  • 脳幹大脳の下方に位置し、上から順に中脳橋(きょう)、延髄(えんずい)で構成されます。
  • 小脳大脳の後下方、脳幹の背側に位置する丸い塊です。

1-3. 各部位の役割と「進化のストーリー」

これら脳の各部位の役割は、人類の「進化のプロセス」と合わせて理解すると、驚くほど簡単に頭へ定着します。

脳は進化の過程で、以下の順番で高度化してきました。

$$
\text{脳幹(生命維持)} \rightarrow \text{間脳(自律調整)} \rightarrow \text{大脳(思考・人格)}
$$

  • ① 生きるための脳:脳幹(中脳・橋・延髄)進化の最初期から存在する、最も原始的な構造です。魚類や爬虫類にもしっかりと発達しており、呼吸・循環・意識レベルの調節など、生命維持に直結する中枢が集まっています。
  • ② 調整する脳:間脳(視床・視床下部)脳幹の上に乗るように発達した領域です。視床は嗅覚を除くすべての感覚情報の中継核(大脳へ入る前の最終ゲート)として機能します。視床下部自律神経・内分泌(ホルモン)・体温調節の中枢であり、体内の環境を一定に保つ「恒常性(ホメオスタシス)維持のセンター」です。
  • ③ 考える脳:大脳(前脳の一部)進化の最後期に、人間(霊長類)で著しく発達した領域です。思考・感情・人格・意識・高度な言語機能といった高次機能を担います。人間が「心」や「高度な文明」を持つのは、この大脳の表面を覆う大脳皮質が圧倒的に発達したためです。
  • 運動を滑らかにする装置:小脳大脳が「動け!」という大雑把な指令を出したとき、それを精密化し、運動の協調と平衡機能(バランス)を保つのが小脳の役割です。お酒を飲みすぎると千鳥足になるのは、アルコールによって小脳の「動きを滑らかにする機能」が一過性に麻痺するためです。

大脳皮質は高度な機能を持つ反面、放射線や虚血(酸素不足)に対して**極めて感受性が高い(壊れやすい)**という特徴があります。これに対し、生命維持を司る「脳幹」は原始的で強固な構造であるため、放射線感受性は比較的低めです。解剖学的な進化の深さは、生物学的なタフさにも直結していることを意識しておきましょう。

第2章:大脳半球の区分と機能・重要なくぼみ(溝)

大脳の表面(大脳皮質)は、場所によって役割が完全に分担されています。これを機能局在と呼びます。

国家試験では、各領域(葉)の機能だけでなく、それらを隔てる「溝(裂)」がどれなのか、そしてその溝の周囲をどの血管が走り、障害されるとどうなるかという臨床画像レベルの知識がセットで問われます。

点数が伸び悩む層が最も見落としやすい「解剖と臨床画像の一致」を、ここで完全にクリアしましょう。

2-1. 大脳半球の5つの区分(葉)

大脳は、骨の名称に対応した4つの主要な「葉(よう)」に、深部などの特殊な領域を加えた形で区分されます。

  • 前頭葉(ぜんとうよう)「運動と人格」のセンターです。 体を動かす指令を出す一次運動野、人間らしい理性を司る前前頭野(人格・判断・思考)、そして言葉を話すための運動性言語中枢(ブローカ野)が存在します。かつて精神医療で行われていた前頭葉切截術(ロボトミー)では、前頭葉を損傷させることで患者のおとなしさと引き換えに激しい人格変化が生じた歴史があり、これが「前頭葉=人格」の強い記憶フックになります。
  • 頭頂葉(とうちょうよう)「触る・感じる・空間認知」のセンターです。 皮膚の感覚や位置情報が集まる一次体性感覚野、それらの情報を統合する知覚統合、文字を視覚的に理解する視覚性言語中枢(角回)が存在します。
  • 側頭葉(そくとうよう)「聞く・理解する・におい・味」のセンターです。 耳のすぐ横にあるため聴覚中枢があり、相手の言葉の意味を理解する感覚性言語中枢(ウェルニッケ野)、さらに嗅覚中枢味覚中枢もここに位置します。
  • 後頭葉(こうとうよう)「見る」ことに特化したセンターです。 目から入った視覚情報は、脳の最骨尾である一次視覚野へと送られます。後頭部を強く打ったときに「目がチカチカして一瞬見えなくなる」のは、この視覚中枢に直接衝撃が加わるためです。
  • 島(とう / 島皮質)側頭葉と前頭葉を左右に押し広げた、外側溝(シルビウス裂)の深部に隠れている特殊な灰白質です。この島を覆い隠している周囲の脳組織を弁蓋(べんがい)と呼びます。
  • 辺縁葉(へんえんよう / 大脳辺縁系)大脳の内側面に位置し、感情を生み出す情動、生きていくための本能行動、そして試験対策の最重要拠点である記憶(海馬・扁桃体など)を司る、野生的な古い脳のシステムです。

2-2. 2大重要な溝(裂)

大脳の表面にあるシワ(くぼみ)のうち、国試で絶対に落とせない超重要拠点が2つあります。ここを画像(CT/MRI)で同定できるかどうかが、合格への分かれ道です。

① 中心溝(ローランド裂)

前頭葉と頭頂葉を分ける、脳の真上を横切る最も重要な溝です。

  • 機能的対比のロジック中心溝を挟んで、前方(前頭葉)=運動(一次運動野)、後方(頭頂葉)=感覚(一次体性感覚野)という完璧な前後対比が存在します。CT画像で中心溝を見つけることができれば、「その一歩前が出血していれば運動麻痺が起きる」「後ろなら感覚障害が起きる」という臨床像が瞬時に紐解けます。

② 外側溝(シルビウス裂)

前頭葉(および頭頂葉)と、下側にある側頭葉を大きく隔てる側面の深い溝です。放射線技師にとって、この溝は「血管障害の主戦場」として記憶する必要があります。

  • 脳血管障害との密接なロジック外側溝の内部には、大脳の広範囲に栄養を送る中大脳動脈(MCA)が走行しています。優位半球(多くの人で左脳)の外側溝周辺には、言葉を話す「ブローカ野」と言葉を理解する「ウェルニッケ野」という2つの言語中枢が近接しています。そのため、MCA梗塞(中大脳動脈の詰まり)が起きると、非常に高確率で深刻な失語症を来すのです。

脳の動脈が破綻して起こるくも膜下出血(SAH)では、出血した血液がくも膜下腔に広がります。頭部CTを撮影した際、深い溝であるこのシルビウス裂(外側溝)の形に沿って血液がさーっと流れ込み、鮮やかな白(高吸収域)として描出されるのが典型的な特徴です。解剖学的な溝の深さが、画像診断における「見え方」の理由そのものになっています。

第3章:大脳基底核・脳幹・間脳:運動調整と生命維持の中枢

大脳の奥深くや下方に位置する構造物は、名前や構成が複雑に入り組んでおり、多くの国試受験生が苦手意識を持つエリアです。

しかし、ここには「運動を滑らかにするためのフィルタリング機能」や「生きるための自律機能」など、非常に明確な役割分担があります。

それぞれの構造の包含関係(どの塊が何を含むか)と、臨床疾患(パーキンソン病など)を結びつけるロジックで一気に攻略しましょう。

3-1. 大脳基底核:運動を微調整するフィルタリング中枢

大脳の深部(白質の中)に埋もれるように存在する、灰白質(神経細胞の集まり)のかたまりを大脳基底核(だいのうきていかく)と呼びます。

  • 役割の本質大脳皮質が出した運動指令をそのまま筋肉に通すのではなく、「余分な動きを抑え、滑らかで正確な運動に調整する」という、運動のクオリティコントロールを担っています。

国試で最も狙われるのが、この大脳基底核を構成する各部位の「組み合わせ(名称)」です。以下の公式を完全に暗記してください。

大脳基底核の構成公式

$$\text{線条体(せんじょうたい)} = \text{尾状核(びじょうかく)} + \text{被殻(ひかく)}$$

$$\text{レンズ核} = \text{淡蒼球(たんそうきゅう)} + \text{被殻(ひかく)}$$

★国試のひっかけ対策

公式を見てわかる通り、被殻(ひかく)は「線条体」と「レンズ核」の両方に含まれるという超重要パーツです。試験ではここが入れ替えられて出題されるため、「被殻は両方に顔を出す二股パーツ」と覚えておきましょう。

大脳基底核の障害で起こる2大疾患

  • ① ハンチントン舞踏病基底核が持つ「不要な動きを抑制するブレーキ機能」が壊れる疾患です。その結果、自分の意思とは関係なく、手足や顔がくねくねと不規則に動く不随意運動(舞踏様運動)が出現します。まるで踊っているように見えるのが特徴です。
  • ② パーキンソン病後述する中脳の「黒質」から線条体へと送られるドパミンという神経伝達物質が著しく低下することで発症します。ブレーキが効きすぎるような状態になり、手が細かくふるえる振戦(しんせん)、動きが遅くなる・一歩目が出ない無動、筋肉がこわばる筋強剛(きんきょうごう / 筋固縮)という3大症状が現れます。

3-2. 脳幹:生命維持のラスト砦(中脳・橋・延髄)

脳幹は、上から中脳延髄の3つに分かれ、生命を維持するための本能的な反射や中枢が凝縮されています。

① 中脳(ちゅうのう)

視覚や聴覚に関する反射、および意識レベルの維持(網様体)を担う部位です。

  • 対光反射(瞳孔反射)の中枢:目に光を当てたときに瞳孔が縮む反射の中枢は中脳にあります。救急医療でライトを当てて意識状態を見るのは、中脳が生きているかを確認するためです。
  • 黒質(こくしつ):随意運動の調節に関与し、ドパミンを産生します。前述の通り、ここの神経が変性するとパーキンソン病を引き起こします。
  • 赤質(せきしつ):小脳と脊髄を中継し、屈筋(関節を曲げる筋肉)を優位にするなど、不随意の運動調節を行います。

② 橋(きょう)

大脳と小脳を連絡する巨大な「中継基地(ブリッジ)」です。 第4脳室の底を形成しており、角膜反射や排尿中枢、呼吸調整の一部を担います。また、顔の感覚や運動を司る三叉神経や顔面神経の核が存在します。

③ 延髄(えんずい)

首の付け根のあたりに位置する、文字通り「生きるための中枢」です。

  • 呼吸中枢、循環(心臓・血圧)中枢、血管収縮・拡張の調節
  • 嚥下(飲み込み)反射、嘔吐中枢、唾液分泌、咳嗽(せき)反射

★臨床的イメージ

アニメや映画で「首の後ろをトンと叩いて気絶させる」描写がありますが、あれは延髄や脳幹部に衝撃が加わり、一時的な意識障害(脳震盪)が起きるイメージに基づいています。しかし実際の臨床では、頸部外傷などで延髄に強いダメージを受けると、呼吸停止や心停止に直結するため極めて危険な部位です。

3-3. 間脳:感覚のゲートと恒常性の指令塔(視床・視床下部)

大脳と脳幹の間に位置し、第3脳室の周囲を取り囲むのが間脳(かんのう)です。

  • 視床(ししょう)左右一対の卵型の塊で、第3脳室の側壁をなします。「嗅覚を除くすべての感覚の中継点」であり、視覚・聴覚・皮膚感覚などはすべて、この視床という最終ゲートを通ってから大脳皮質へ送られます。障害されると、強い感覚障害や視床痛と呼ばれる強い痛みを引き起こします。
  • 視床下部(ししょうかぶ)視床の下方(第3脳室の下壁)にあり、下垂体、乳頭体、灰白隆起、漏斗、視交叉などで構成されます。「恒常性(ホメオスタシス)維持の最高中枢」であり、自律神経系と内分泌(ホルモン)系を統合して、体温・水分バランス・食欲・生殖・情動をコントロールする、本能の司令塔です。

第4章:脳脊髄液(CSF)の循環システムと髄膜の3層構造

脳という重くデリケートな組織は、硬い頭蓋骨の中でダイレクトに守られているわけではありません。

「髄膜」という3層の膜で包まれ、さらに「脳脊髄液」という液体の中にプカプカと浮かぶことで、外部からの衝撃を吸収しています。

国試では、この液体の流れる順番と、膜の間で出血が起きたときのCT画像の変化が最大の頻出ポイントです。

4-1. 脳脊髄液(CSF)の役割と産生

脳脊髄液(Cerebrospinal Fluid:CSF)は、脳室と呼ばれる脳の中の隙間で作られ、脳の周りを循環している無色透明な液体です。

脳脊髄液が存在する3つの理由(役割)

  • 1. 衝撃の緩衝(クッション作用) 脳を液体に浮かべる(浮力を得る)ことで、約1300gある脳の実質重量を、なんと約50g程度にまで激減させます。これにより、頭を動かしたときの自重による潰れや、外部からの衝撃から脳を保護しています。
  • 2. 栄養・代謝物の運搬 脳に栄養を供給し、脳の活動によって生じた老廃物を回収する、いわば「脳のリンパ液」のような役割を持っています。
  • 3. 頭蓋内圧の調整 産生される量と、静脈へ吸収される量のバランスをとることで、頭蓋骨の内部の圧力を常に一定に保っています。

どこで作られるのか?

脳室の中にある脈絡叢(みゃくらくそう)という毛細血管が豊富な組織から分泌されます。脈絡叢は、側脳室、第3脳室、第4脳室のすべてに存在します。

4-2. 【一発暗記】脳脊髄液の循環ルート

脈絡叢から分泌された脳脊髄液は、決まったルートを通って脳の表面へ流れ出し、最終的に静脈血へと吸収されます。国家試験ではこの「順番」がストレートに問われます。

まずは以下の流れを正確に把握しましょう。

脳脊髄液の流路

  1. 脈絡叢(各脳室で産生)
  2. 側脳室(左右にある大きな脳室) (通過:室間孔 / モンロー孔)
  3. 第3脳室(間脳の間にある隙間) (通過:中脳水道 ※ここが閉塞すると「水頭症」の原因になります)
  4. 第4脳室(橋・延髄と小脳の間にある隙間) (通過:ルシュカ孔 / 外側口 ・ マジャンディー孔 / 正中口)
  5. くも膜下腔(脳の表面を覆う液体のスペース)
  6. くも膜顆粒(くもまくかりゅう)(吸収の拠点)
  7. 硬膜静脈洞(静脈系へ合流・吸収)

試験直前に役立つ!完璧な順序固定型ゴロ合わせ

「隣の(側脳室) モり(モンロー孔) 三(第3脳室) 中(中脳水道) 夜は(第4脳室) マジ(マジャンディー孔) ク(くも膜下腔) ソ(くも膜顆粒)!!」 ※ルシュカ孔(外側口)もマジャンディー孔と同じタイミングの出口です。

4-3. 頭の膜(髄膜)の3層構造

脳を包む髄膜は、外側(頭蓋骨側)から内側(脳実質側)に向かって、硬膜(こうまく)くも膜軟膜(なんまく) の3層構造をしています。

  • 硬膜 最も外側にある硬くて頑丈な膜です。実は二層構造をしており、頭蓋骨にぴったり張り付いている硬膜外板と、内側の硬膜内板に分かれます。この2層の隙間に、脳の静脈血が通る硬膜静脈洞が形成されています。
  • くも膜 硬膜の内側にある薄い膜です。このくも膜の下にある広大なスペース(くも膜下腔)を、先ほどの脳脊髄液が走っています。
  • 軟膜 最も内側にある膜で、脳の表面のシワ(脳回や脳溝)の凹凸に完全に密着して入り込んでいます。

4-4. 【最重要】硬膜外血腫 vs 硬膜下血腫のCT画像ロジック

放射線技師の国試において、最も出題され、かつ臨床でも毎日遭遇するのがこの2つの血腫の画像診断です。「なぜ、CTでその形に写るのか」という本質(ロジック)を理解すれば、暗記に頼る必要はなくなります。

硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)

  • 出血部位:頭蓋骨 と 硬膜 の間
  • 破綻する血管中硬膜動脈など(動脈)
  • CT画像での形状凸レンズ状(両凸型)
  • 形が決まる理由(物理的ロジック): 硬膜は頭蓋骨に非常に強固にへばりついています。そこへ頭部外傷などによって勢いの強い「動脈血」が流れ込むと、硬膜を骨から局所的に「ペリペリと力づくで剥がす」ように血液が溜まります。周囲へ簡単に広がれないため、内側へぷっくり膨らんだ凸レンズ型になります。

硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)

  • 出血部位:硬膜 と くも膜 の間
  • 破綻する血管架橋静脈(静脈)
  • CT画像での形状三日月型(半月状)
  • 形が決まる理由(物理的ロジック): 硬膜とくも膜の間は、もともと結合が非常に緩く、広がりやすいスペースです。そのため、外傷などによって勢いの弱い「静脈血」が漏れ出た際、障害物のない隙間に沿って「さーっと全体へ薄く広がっていく」特性があります。結果として、脳の表面の形に沿った綺麗な三日月型になります。

★国試に活きる技師の視点(解剖学的階層の最終整理) 頭の外側から脳へ向かう順番と、血腫のレイヤーを完全に一致させておきましょう。

頭蓋骨 → (硬膜外血腫) → 硬膜 → (硬膜下血腫) → くも膜 → くも膜下腔(脳脊髄液・くも膜下出血の主戦場) → 軟膜 → 脳実質

第5章:感覚器の解剖:内耳の音響伝導と外眼筋の支配神経

脳から直接出入りする神経や、それに直結する感覚器(耳や目)の解剖は、国家試験において非常に高得点を狙いやすい「暗記の宝庫」です。

ここまでの章で脳の本体をマスターしましたので、最後は脳に情報を送る「内耳」の構造と、脳からの指令で動く「外眼筋」のロジックを完璧に整理して、国試対策を締めくくりましょう。

5-1. 内耳:側頭骨内に潜む聴覚と平衡覚のセンサー

耳は外側から「外耳」「中耳」「内耳」に分かれますが、放射線技師の国家試験で最も重要なのが内耳(ないじ)です。 内耳は、耳の横の骨である側頭骨(そくとうこつ)の内部(錐体部)にがっちりと保護されて存在しています。

内耳の役割は大きく分けて聴覚(聞く)平衡覚(バランス)の2つであり、以下の3つのパーツで構成されています。

  • 蝸牛(かぎゅう) カタツムリのような形をした、聴覚を司る器官です。中耳から伝わってきた「音の振動」を、脳に伝えるための「電気信号」へと変換する重要な役割を持ちます。
  • 前庭(ぜんてい) 蝸牛と三半規管の間に位置し、直線加速度・重力を感知します。頭の傾きや、エレベーターに乗ったときの上下の移動(体の位置変化)を感知するセンサーです。
  • 三半規管(さんはんきかん) 前・後・外の3つの半円状の管が互いに直角に交わっており、回転運動(回転加速度)を感知します。体がどの方向に回っているかを瞬時に把握するためのセンサーです。

音が脳に伝わるまでの経路と「卵円窓」のロジック

空気の震えである音が、最終的に電気信号として脳(聴神経)に伝わるまでのルートは以下の通りです。この順番も確実に頭に入れましょう。

外耳道 → 鼓膜 → ツチ骨 → キヌタ骨 → アブミ骨 → 蝸牛 → 聴神経

★国試に活きる技師の視点(固体から液体への変換ロジック) 中耳にある3つの耳小骨(ツチ・キヌタ・アブミ)のうち、最も奥にあるアブミ骨の底は、蝸牛の入り口にある卵円窓(らんえんそう)という小さな窓に接しています。 蝸牛の内部は内リンパという液体で満たされているため、アブミ骨が卵円窓をトントンと叩くことで、「耳小骨の振動(個体の振動)」が「リンパ液の波(液体の振動)」へと変換されます。この液体の波が蝸牛の有毛細胞を刺激することで、初めて電気信号が生まれます。卵円窓は、振動のメディア(媒体)を変換する超重要拠点です。

内耳ルートの一発暗記ゴロ

「ガイコツ来たあぶねーか聞く」

  • ガイ = 外耳道
  • コ = 鼓膜
  • ツ = ツチ骨
  • 来た = キヌタ骨
  • あぶ = アブミ骨
  • か = 蝸牛
  • 聞く = 聴神経

5-2. 外眼筋:眼球を動かす6本の筋肉と3つの支配神経

眼球の動き(眼球運動)は、片目につき6本ある外眼筋(がいがんきん)という筋肉の絶妙なチームワークによってコントロールされています。

国家試験では、それぞれの筋肉が「眼球をどの方向に動かすか(作用)」と、「どの脳神経によって動かされているか(支配神経)」の組み合わせが頻出します。

外眼筋の6つの種類と主な作用

眼球を上下左右にまっすぐ引っ張る「直筋」が4本と、斜めに引っ張る「斜筋」が2本あります。

  • 上直筋(じょうちょきん) 眼球を上内側(主に上方向)へ動かします。
  • 下直筋(かちょきん) 眼球を下内側(主に下方向)へ動かします。
  • 内側直筋(ないそくちょきん) 眼球を内側(鼻の方向)へ動かします。
  • 外側直筋(がいそくちょきん) 眼球を外側(耳の方向)へ動かします。
  • 上斜筋(じょうしゃきん) 少し特殊な動きをします。眼球を下外側(主に下を向いて外を見る方向)へ動かします。
  • 下斜筋(かしゃきん) こちらも特殊です。眼球を上外側(主に上を向いて外を見る方向)へ動かします。

【超重要】外眼筋の支配神経ロジック

6本ある外眼筋は、動眼神経(第3脳神経)滑車神経(第4脳神経)、外転神経(第6脳神経)という3つの脳神経によって分担して支配されています。 すべてを力任せに覚えるのではなく、「例外の2本」だけを完璧に覚えるのがスマートな暗記戦略です。

  • 外転神経(Ⅵ)が支配する筋肉:外側直筋 「目を外側に外転させる筋肉だから、外転神経」という、名前そのものの非常にわかりやすいロジックです。まずはこれを確実に1本覚えましょう。
  • 滑車神経(Ⅳ)が支配する筋肉:上斜筋 上斜筋は、眼窩の奥にある「滑車」と呼ばれる軟骨のループをくぐり抜けて眼球に付着しているため、滑車神経が支配します。「滑車を通るから上斜筋」と紐づけて覚えましょう。
  • 動眼神経(Ⅲ)が支配する筋肉:その他の4本(上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋) 上記の2本(外側直筋と上斜筋)以外の残りの筋肉は、すべて動眼神経が支配しています。

★国試のひっかけ対策 試験では「上斜筋は動眼神経支配である」といったひっかけがよく出ます。頭の中で**「外側直筋=外転神経」「上斜筋=滑車神経」「それ以外=すべて動眼神経」**という優先順位を作っておけば、外眼筋の支配神経問題で迷うことは一切なくなります。

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