[【臨床病理学】環境・遺伝性疾患:疫学・公害・生活習慣病の動態]

第1章:主要死因と疫学動態

日本の公衆衛生統計に基づき、現代日本人がどのような疾患で死亡しているか、また性別による罹患傾向の差を整理する。

1-1. 主要死因別にみた死亡率順位

【基礎解説】

・1位:悪性新生物(がん)

・2位:心疾患(高血圧性を除く)

・3位:老衰

・4位:脳血管疾患

・5位:肺炎

【補足・国試の要点】

近年の動向として、高齢化に伴い**「老衰」**による死亡率が上昇し、第3位に定着している点が重要である。

かつて上位であった脳血管疾患や肺炎を上回っている現状を把握せよ。また、悪性新生物は全死因の約4分の1以上を占め、不動の1位である。

1-2. 男女別の死因と部位別がん順位

【基礎解説】

・男女別の主要死因:男女ともに1位は悪性新生物、2位は心疾患である。女性は平均寿命が長いため、男性に比べ「老衰」の割合が高い傾向にある。

・男性の部位別がん死因:1位 、2位 大腸、3位 、4位 膵臓、5位 肝臓

・女性の部位別がん死因:1位 大腸、2位 、3位 膵臓、4位 、5位 乳房

【補足・国試の要点】

男性の肺がんは喫煙習慣と強い相関がある。女性の大腸がん死亡率が1位である点は国試で頻出である。

また、女性の乳がんは罹患率(発生率)では圧倒的トップだが、治療の進歩により生存率が高いため、死因順位(死亡率)では5位となる違いを正確に区別せよ。

1-3. 性差による特定疾患の傾向

【基礎解説】

・男性に多い疾患:食道癌心筋梗塞脳血管性認知症血友病痛風(高尿酸血症)

・女性に多い疾患:バセドウ病橋本病膠原病(関節リウマチ等)、骨粗鬆症

【補足・国試の要点】

血友病は**伴性劣性遺伝(X連鎖劣性遺伝)**の形式をとるため、構造的に男性に発現する。食道癌や心筋梗塞は、喫煙や飲酒といった生活習慣の性差が反映されている。

一方、自己免疫疾患(バセドウ病や膠原病)は女性に好発する。また、骨粗鬆症は閉経による**エストロゲン(女性ホルモン)**の減少により骨吸収が亢進するため、圧倒的に女性に多い。


第2章:生活習慣病とメタボリックシンドローム

不摂生な生活の積み重ねにより発症し、動脈硬化を基盤とした致死的なイベント(脳卒中・心筋梗塞)に繋がる疾患群である。

2-1. 主な生活習慣病

【基礎解説】

・循環器系:高血圧症脂質異常症(高脂血症)脳梗塞脳出血心筋梗塞

・代謝系:Ⅱ型糖尿病高尿酸血症(痛風)肥満

・呼吸器系:肺扁平上皮癌COPD(慢性閉塞性肺疾患)

・その他:大腸癌アルコール性肝障害骨粗鬆症

【補足・国試の要点】

特に肺扁平上皮癌やCOPDは喫煙との関連が極めて強く、生活習慣病の典型例として扱われる。

放射線技師は、これらの疾患の経過観察において胸部X線やCT画像の変化を捉える役割を担う。

2-2. メタボリックシンドロームの判定基準

【基礎解説】

・必須項目:腹囲(内臓脂肪蓄積):男性85cm以上、女性90cm以上

・選択項目(以下から2項目以上):

・脂質:中性脂肪150mg/dL以上 または HDLコレステロール40mg/dL未満

・血圧:収縮期130mmHg以上 または 拡張期85mmHg以上

・血糖:空腹時血糖値110mg/dL以上

【補足・国試の要点】

判定の絶対条件として**「腹囲」**が設定されている点が最大の特徴である。

内臓脂肪の蓄積を基盤として、脂質・血圧・血糖の異常が重複することで、動脈硬化が加速度的に進行する病態を指す。


第3章:遺伝性疾患と環境性疾患(公害・眼疾患)

遺伝子レベルの異常と、環境汚染による健康被害について整理する。

3-1. 遺伝子・染色体疾患

【基礎解説】

・常染色体異常:ダウン症(21トリソミー)、小人症

・性染色体異常:クラインフェルター症候群(XXY)、ターナー症候群(XO)

【補足・国試の要点】

染色体の「数」の異常が、常染色体によるものか性染色体によるものかを区別せよ。

特にターナー症候群は女性のみ、クラインフェルター症候群は男性のみに発症する。

3-2. 公害と原因物質

【基礎解説】

水俣病(熊本・新潟):有機水銀(メチル水銀)による水質汚染

四日市ぜんそく亜硫酸ガスによる大気汚染

イタイイタイ病カドミウムによる水質汚染

【補足・国試の要点】

イタイイタイ病の原因物質であるカドミウムは、近位尿細管障害による腎障害と、それに伴う骨軟化症(骨がもろくなり激痛を伴う)を引き起こす点が、放射線学的にも重要な知識である。

3-3. 眼の疾患

【基礎解説】

白内障水晶体の混濁。放射線、加齢、糖尿病が原因となる

夜盲症ビタミンA欠乏による暗順応障害

ドライアイ:涙液不足による角膜乾燥

【補足・国試の要点】

放射線技師にとって、白内障は放射線の**「確定論的影響(組織反応)」**の代表例である。被曝による水晶体混濁は、一度発生すると外科的手術以外に根治は困難である。

また、夜盲症は脂溶性ビタミンである**ビタミンA(DAKEの一つ)**の欠乏によって生じる。

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