インバータ式高電圧装置
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① 分類
1.変圧器形(据置形)
出力:30~100 kW
電源設備から直接X線照射エネルギーを供給する。
一般撮影装置に多く用いられる。
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2.エネルギー蓄積形
● コンデンサエネルギー蓄積形
胃部・胸部集団検診などの間接撮影装置に用いる。
あらかじめ充電し、
放電によってX線を発生させる方式。
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● 電池エネルギー蓄積形(移動形)
出力:約15 kW
移動型装置に使用される。
外部電源に依存しない。
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② 基本原理
交流電源
→ 直流へ整流
→ 高周波交流に再変換
→ 高電圧変圧器で昇圧
という三段階変換方式。
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理解ポイント
周波数を高くすると、
変圧器を小型化できる。
(鉄心サイズが小さくて済む)
これがインバータ装置の最大の利点。
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③ 主な特徴
1.低リプル百分率
高周波化により、
管電圧波形はほぼ一定電圧に近づく。
単相電源でも、
三相12ピーク形と同等の出力が得られる。
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なぜリプルが小さいのか
高周波では電圧変動周期が非常に短い。
そのため、高電圧ケーブルの浮遊容量が平滑回路のように働く。
結果として波形が滑らかになる。
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2.軟線成分が少ない
リプルが小さい
→ 電圧の谷がほとんどない
低電圧時間が短い
→ 低エネルギーX線が減少
→ 線質が硬くなる。
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3.位相非依存性
従来装置では
電源位相に依存して照射が制限された。
インバータでは
電源位相に関係なく
任意のタイミングで発生・遮断できる。
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4.高周波動作
周波数:数十~50 kHz
周波数が高いほど
・リプル百分率は小さくなる
・変圧器は小型化
・ケーブル平滑効果増大
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5.高周波のデメリット
周波数が高くなると
・電磁障害(EMI)が発生しやすい
・電力変換効率は低下する
・変圧器での損失増加
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6.短時間最大定格と電源条件
インバータ装置は
電源容量の影響を強く受ける。
電源電圧変動率:
無負荷時:5%以内
短時間最大負荷時:10%以内(100・200V)
電源インピーダンスが大きい
→ 電圧降下が起きやすい
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7.管電圧立下り時間
高周波かつ小管電流の場合、
ケーブルの平滑作用が強くなり、
管電圧の立下り時間は長くなる。
これは過照射の原因になることがある。
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8.電力変換効率
インバータ周波数が高いほど
変換効率は低下する。
(スイッチング損失増加)
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④ 単相・三相との本質比較
単相:
波形脈動大 → 軟線多 → 出力小
三相:
脈動減少 → 出力増大
インバータ:
ほぼ定電圧 → 低リプル → 高出力・高効率
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⑤ 国家試験頻出ポイント
・交流→直流→高周波交流
・周波数 数十~50kHz
・リプル小
・単相でも三相並み
・EMI対策必要
・周波数↑ → リプル↓
・周波数↑ → 効率↓
方形波型インバータ式高電圧装置
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① 定義
方形波型インバータ式高電圧装置とは、
直流電力を半導体スイッチング素子により
高周波の方形波交流へ変換し、
高電圧を発生させる方式である。
スイッチング周波数は固定される。
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② 基本回路構成
① AC-DCコンバータ(交流-直流変換)
交流電源を整流し、
直流電源を得る。
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② DC-DCコンバータ
(直流電圧可変回路)
チョッパ回路+平滑化フィルタで構成される。
管電圧の調整を行う。
※共振形インバータでは不要。
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③ 高周波インバータ
直流電力を
大電力半導体スイッチング素子により
高周波交流へ変換する。
ここで方形波が生成される。
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④ 高周波高電圧変圧器
高周波交流を昇圧し、
高電圧交流を発生させる。
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⑤ 全波整流回路・高電圧ケーブル
高電圧交流を整流し、
X線管へ供給する。
ケーブルの浮遊容量が
平滑効果をもつ。
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③ 方形波型の特徴
1.電圧波形
方形波形では、
スイッチング時の
電圧・電流変化が急峻(直線的)。
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2.出力特性
電圧と電流が同時に存在する時間が長い。
→ 出力制御が安定。
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3.周波数特性
負荷が変化しても
インバータ周波数は一定。
(固定周波数方式)
したがって、
リプル百分率は
負荷によってほとんど変化しない。
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4.スイッチング方式
ハードスイッチング方式。
スイッチング時に
電圧と電流が同時に存在するため、
半導体素子での電力損失が大きい。
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④ メリット・デメリット整理
● メリット
・制御が比較的簡単
・周波数固定で安定
● デメリット
・スイッチング損失が大きい
・発熱が大きい
共振形インバータ式高電圧装置
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① 基本構成
共振形インバータは、共振回路を利用して高周波電力を生成する方式である。
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共振回路
構成:
・共振用コイル
・コンデンサ
・高電圧変圧器
この共振回路によって電圧・電流波形を制御する。
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② 特徴
1.ソフトスイッチング
電圧または電流がほぼゼロの状態で
スイッチングを行う。
→ 半導体素子での電力損失が小さい
→ 発熱が少ない
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2.DC-DCコンバータ不要
方形波型と異なり、
直流電圧可変回路(DC-DCコンバータ)が不要。
共振周波数制御によって出力を調整する。
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3.電圧・電流波形の特性
共振形では電流が遅れて変化する。
そのため、電圧と電流が同時に大きな値をもつ期間が短い。
→ スイッチング損失が小さい。
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4.周波数可変方式
負荷が高くなるほど
インバータ周波数が高くなる。
(周波数可変方式)
周波数が高くなる
→ リプル百分率が小さくなる。
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③ スイッチング損失の比較
スイッチング時の損失:
方形波(非共振)インバータの方が損失が大きい
共振形インバータは方形波インバータに比べて損失が小さい
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調整機構
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① 管電圧調整
高電圧変圧器一次側入力を制御する。
方式は主に3種類。
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● 共振形
共振回路に加えるインバータ周波数と
回路固有の共振周波数との関係で管電圧を決定する。
(周波数制御)
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● 方形波形
DC-DCコンバータで管電圧を調整。
チョッパ回路の
オン/オフ時間の割合(デューティ比)で決まる。
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● その他方式
インバータ回路の
・出力パルス幅
・位相シフト角
によって管電圧を制御する方式もある。
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※ フィードバック制御により精度は向上している。
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② 撮影時間調整
インバータ回路を駆動する時間で制御する。
電源周期の影響を受けない。
(単相装置との大きな違い)
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③ 管電流制御
高周波加熱方式を用いる。
インバータ制御によって
フィラメント加熱電流を制御する。
フィードバック制御を行う場合もある。
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④ 共振形と方形波形の整理
共振形
→ 周波数可変
→ ソフトスイッチング
→ 損失小
方形波形
→ 周波数固定
→ ハードスイッチング
→ 損失大
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管電圧リプル率
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① 定義
管電圧リプル率とは、
管電圧の最大値と最小値の差を
最大値に対する割合(%)で表したもの。
リプル率が小さいほど、
電圧波形は滑らかである。
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② 基本原理
電圧波形が滑らか
→ リプル率は小さい
電圧波形が脈動
→ リプル率は大きい
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③ リプル率が小さくなる条件
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① インバータ周波数が高い
周波数が高い
→ 電圧変動周期が短い
→ 平滑化しやすい
→ リプル率:小さくなる
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② 高電圧ケーブルが長い
高電圧ケーブルには浮遊容量がある。
ケーブルが長い
→ 静電容量が大きい
→ コンデンサのように働く
→ 平滑効果が増大
→ リプル率:小さくなる
※ただし電源効率は低下する(損失増大)
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③ 共振波形での管電流が大きい
共振形では電流が遅れて流れる。
管電流が大きい
→ エネルギー供給が安定
→ 波形が滑らか
→ リプル率:小さくなる
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④ 方形波形での管電流が小さい
方形波形で管電流が小さい場合、
ケーブルの平滑作用が強く働く。
→ リプル率:小さくなる
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④ 因果まとめ
インバータ周波数:高い
高電圧ケーブル:長い
管電流条件:平滑効果が働く
↓
高電圧ケーブルの平滑効果:大きい
↓
管電圧リプル率:小さい
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⑤ 理解ポイント
リプル率は
「電圧をどれだけ一定にできるか」
の指標。
平滑効果が大きいほど
リプル率は小さくなる。
X線制御装置(管電圧・管電流・撮影時間の制御)
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① 管電圧の制御
管電圧の選択は、
単巻変圧器(二次側)のタップ切替によって行う。
一次側電圧を変化させ、
高電圧変圧器の出力を制御する。
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② 管電流の制御
管電流の制御は、
フィラメント加熱変圧器の一次側タップを切り替えることで行う。
加熱電流を変化させ
熱電子放出量を調整する。
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③ 撮影時間の制御
装置の種類によって定義が異なる。
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1.インバータ式
6ピーク形
12ピーク形
撮影時間は、管電圧波高値(最大値)の75%に達した立ち上がり点から、
75%に低下する立ち下がり点までの時間で定義する。
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2.2ピーク形(単相全波整流形)
撮影時間は、管電圧波形のパルス数で表す。
電気角45°を超えた部分を1パルスとする。
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3.コンデンサ式
撮影時間は、
負荷開始(充電電圧)から
負荷終了(波尾切断電圧)までの時間で定義する。
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④ 理解ポイント
装置ごとに
「時間の測り方」が違う。
インバータ・三相
→ 75%基準
単相
→ パルス数
コンデンサ式
→ 充電から波尾切断まで

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