第1章:ショックと循環不全の病態
ショックとは、有効循環血流量が急激に減少し、末梢組織への酸素供給が著しく停滞した結果、細胞代謝に障害を来した全身不全状態を指す。
1-1. ショックの臨床症状と原因
【基礎解説】
・主要症状:低血圧、頻脈、皮膚の蒼白、冷汗、意識障害(周囲に無関心)、脈拍触知不能、呼吸不全
・原因:脱水、心筋梗塞、心タンポナーデ、アナフィラキシー
・エンドトキシンショック(細菌性):血管拡張により皮膚が温かくなる**「ウォームショック」**を呈し、発熱を伴うことが多い
【補足・国試の要点】
ショックの本質は「末梢循環障害」である。生体は血圧低下を補うために脈拍を速めるため、基本的には**「低血圧+頻脈」**の組み合わせとなる。
ただし、細菌感染に起因するエンドトキシンショックは、毒素により末梢血管が拡張するため、初期には四肢が温かい状態(ウォームショック)となる点が、他のショック(冷たく湿った皮膚)との識別点として極めて重要である。
1-2. 血管迷走神経反射
【基礎解説】
・機序:精神的ストレス、強い疼痛、排泄などの刺激が迷走神経を介して脳幹の血管運動中枢を刺激する生理的反応
・症状:心拍数の低下(徐脈)、血管拡張による血圧低下、冷汗、意識消失
【補足・国試の要点】
放射線科の現場では、穿刺時の痛みや造影剤注入への恐怖心から誘発されることが多い。
最大の特徴は、前述のショック(頻脈)とは対照的に、「徐脈(心拍数低下)」を来す点である。現場での対応としては、速やかに下肢を挙上させ、脳血流の確保を図る。
第2章:放射線検査における緊急報告所見(パニック値)
画像検査において、放置すれば生命に危険が及ぶ致死的な異常所見を「パニック値」と呼び、放射線技師は直ちに医師へ報告する義務がある。
2-1. 単純X線写真におけるパニック値
【基礎解説】
・緊張性気胸:胸膜腔内の圧上昇による縦隔の対側偏位
・フリーエアー(遊離ガス):消化管穿孔を示唆する横隔膜下のガス像
・外傷性骨盤骨折:大量出血のリスクを伴う不安定型骨折
・気管挿管チューブの位置異常:先端が気管分岐部に近すぎる、あるいは食道挿管などの異常
【補足・国試の要点】
特に**「緊張性気胸」**は、健常側の肺や心臓を圧迫し、急速に循環不全(ショック)を来すため、撮影直後の技師による認識と報告が予後を左右する。
2-2. CT・MRIにおけるパニック値
【基礎解説】
・CT:急性大動脈解離、肺血栓塞栓症、動脈瘤破裂、頭蓋内出血、造影剤の血管外漏出
・MRI:急性期脳梗塞(拡散強調画像での高信号)、頭蓋内出血
【補足・国試の要点】
CTでの大動脈解離や肺血栓塞栓症の指摘は、分単位の救急対応を決定づける。
また、造影剤使用中の血管外漏出は、コンパートメント症候群等の二次的障害を防ぐため、即座の撮影中断と適切な処置・報告が求められる。
第3章:褥瘡(じょくそう)
【基礎解説】
・定義:長期臥床患者において、特定の部位が長時間圧迫されることで生じる局所的な血行不全
・結果:周辺組織の虚血から壊死に至る
【補足・国試の要点】
放射線技師は、長時間の検査(血管造影や放射線治療)において、皮膚の脆弱な高齢者や寝たきり患者の圧迫に留意する必要がある。適切な体位変換とクッションによる除圧が予防の基本である。

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