第1章:デジタル画像の保存と「圧縮」のメカニズム
撮影されたデジタル画像はデータ量が非常に大きく、そのままでは院内のサーバー(PACSなど)を圧迫してしまう。そのため、保存や通信の際にはデータを小さくする「圧縮」が不可欠である。本章では、医用画像特有の保存ルールと、2つの代表的な圧縮規格(JPEG)の構造的な違いを解説する。
1-1. 医用画像の絶対ルール「可逆圧縮」
データを圧縮する際、元のデータを1ビットも失うことなく、完全に元の状態へ復元できる方式を 可逆圧縮(ロスレス圧縮) と呼ぶ。
- 圧縮率はおおむね 1/2 〜 1/3 程度にとどまる。
- 医用画像は、微小な石灰化や骨折線などを発見するための重要な診断材料である。1ピクセルでも情報が欠落すると誤診につながる恐れがあるため、原本となる医用画像は原則として「可逆圧縮」でデータを保存するという絶対的なルールが存在する。
1-2. データ量を減らす工夫(ハフマン符号化とDR圧縮)
可逆圧縮の範囲内であっても、効率よくデータを減らすためのアルゴリズムが存在する。国家試験において問われる主要な技術は以下の通りである。
- ハフマン符号化 エントロピー符号化の一種 である。画像内で「よく出現するデータ」には短い符号を、「あまり出現しないデータ」には長い符号を割り当てることで、全体のデータ量を効率的に削減する数学的手法である。
- DR圧縮(ダイナミックレンジ圧縮) 局所的に階調処理を行う 技術である。診断に不要な背景などのデータ幅を圧縮しつつ、関心領域のコントラストは確実に保持することで、見かけ上の画質を劣化させずにデータ容量を削減する。
1-3. 大幅な圧縮を可能にする「不可逆圧縮」
データを完全には復元できなくなるが、人間の目には認識できないレベルで情報を間引くことで、劇的にデータを軽量化する方式を 不可逆圧縮(非可逆圧縮・ロッシー圧縮) と呼ぶ。診断用の原本としては不適切だが、Web上での閲覧用や参考画像、レポートへの添付などに用いられる。
1-4. JPEG と JPEG 2000 の徹底比較
不可逆圧縮の代表的なフォーマットが「JPEG」である。国家試験では、旧規格である JPEG と、新規格である JPEG 2000 の画像変換方式と、それに伴って発生するアーチファクト(ノイズ)の違いを正確に判別する知識が求められる。
■ (1) JPEG(従来型)の特徴
- 非可逆圧縮方式 である。(※可逆圧縮は選択できない)
- 圧縮率は 1/10 〜 1/100 に達する。
- 離散コサイン変換(DCT) を用いた画像変換方式を採用している。
- 処理の単位は 8×8 ピクセルのブロックごとに区切って計算される。
- DCTを用いてブロックごとに処理する性質上、画像を拡大した際に境界部分にモザイクのような ブロックノイズ が発生しやすい。
■ (2) JPEG 2000(新型)の特徴
- 可逆圧縮と非可逆圧縮のどちらも可能 である。
- 従来のJPEGの弱点であった ブロックノイズやモスキートノイズは発生しない。
- 離散ウェーブレット変換(DWT) を用いた画像変換方式を採用している。(※画像をブロックで区切らず、全体を波の集まりとして解析する手法)
- ブロックノイズは発生しないが、DWTを用いる性質上、エッジ(輪郭)の周辺に波紋のような リンギング歪(アーチファクト) が発生するという固有の特徴を持つ。

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